火星有人探査

現在NASAが掲げる長期的計画として火星への有人探査があります。しかし、この計画について「失敗する」と警告しているのは米議会の指示で作成された報告書です。

 米航空宇宙局(NASA)の火星有人探査ミッションは、その方法の見直しと、問題を克服するための十分に計画された明快な戦略を描かない限り失敗に終わると警告する報告書が、米国学術研究会議(National Research Council、NRC)より発表された。

 NRCは米議会の指示で作成された報告書の中で、米政府は火星への有人飛行という目標を達成するための「足掛かり」を利用するべきだと指摘している。

AFPBB News
米国学術研究会議が主張した「足掛かり」とは小惑星探査・月面基地の建設など技術的な要素で、国際協力の元実施するべきだというものです。これについてNASAは2010年にオバマ大統領が演説した新たな宇宙計画とは矛盾しないとしています。

ではなぜNRCがこのような発表を行ったのかという点が謎のなのですが、個人的な意見としてはNASAとオバマ大統領の演説、国際的な流れにズレが生じているためだと思われます。

オバマ大統領の演説とは「月に一旦戻り、それから火星を目指せという人がいる。しかし、私はこう言いたい。我々は既に一度月に行っている。ここにバズ・オルドリンがいる。したがって、我々は技術レベルをより引き上げる方に注力すべきだ」というものです。つまり、オバマ大統領の演説に月探査は盛り込まれておらず、実際にブッシュ大統領が進めていたコンステレーション計画、要は月で技術を獲得した後火星へ向かうという計画は打ち切られています。

今現在、国際的には火星を目指す目標は一致しているものの、火星へ行く足掛かりとして『月に行く案』と『小惑星に行く案』に分かれているとされています。具体的にはロシア(ロスコスモス)は月、欧州宇宙機関も月でNASAだけが小惑星となっています。

NRCの報告書には3つの案が示されていたとのことで、内2つは月再訪を含むもので1つがオバマ政権の小惑星ミッションに沿ったものになっているとのことです。
結局NRCの報告書は深宇宙の探査を「NASA(アメリカ)だけでやる」と頑なに他の宇宙機関との協力を拒否してきたこれまでの姿勢を警告したものだと思われます。

参考: 国際宇宙探査ロードマップ(第2版)JAXA