N-1ロケット_1

オービタル・サイエンシズ社が製造したアンタレスロケット5号機が墜落・爆発した事故について、使用されていたエンジンは40年以上前、旧ソ連が『月』を目指し製造したロケットエンジンだったことが明らかになりました。今回はどのような経緯でアメリカに持ち込まれたのか紹介していこうと思います。

前回紹介したとおり不具合を起こしたのは「NK-33(AJ26-62)」というロケットエンジンです。実はこのエンジン、元は旧ソ連時代に開発、製造したもので知る人ぞ知るソ連の有人月面着陸計画『L-3』で使用されるはずだった超大型ロケット『N-1F』の第一段エンジンでした。

▼N-1ロケット
N-1ロケット

▼NK-33エンジン
NK-33エンジン

N-1ロケットに搭載されたのはNK-15というエンジンで行われた4回の打ち上げは全て失敗しました。続いて改良型N-1FロケットにはNK-15の改良型NK-33が30基搭載される予定でした。しかし、1974年5月にN-1計画の中止が決定しNK-33は使用されることなくそのまま放置されました。その数150基

時は流れ2005年、このエンジンに興味を示したのはアメリカ企業『エアロジェット社』です。理由はそのエンジン性能で、真空中の推力重量比は136.66:1。溶接ではなくロウ付けで行うなど徹底的な軽量も図られており、ケロシンと液体酸素を燃焼させるロケットエンジンとしては現在も世界最高性能を誇っています。

2009年10月1日、放置されていたNK-33を使用し220秒の燃焼試験を行った結果、良好な性能を発揮したためエアロジェット社が40基を購入したとされています。価格は1基あたり1億円という鉄くずのような価格ともいわれており、この価格には合せてエンジンを改良する権利まで含まれていました。

ちなみに09年10月6日に同じく燃焼試験を行ったところ点火から160秒後に炎上する事故を起こしています。原因はN1ロケットでも爆発を引き起こしたと言われている異常振動により燃料供給ラインが破損したためでした。

▼2010年に行われたAJ26の燃焼試験


2010年、最新の電子機器と誘導機構を加えて『AJ26』に改名し燃焼試験に成功します。さらに計測機器の近代化し推進薬への適合性確認など改良を行い『AJ26-62』に再改名しました。しかし、この“改良”とは40年前のエンジンにあと付けするというもので、エンジンその物を新しく製造したものではありませんでした。

AJ26-62が実際にアンタレスロケットに搭載され打ち上げられたのは2013年4月でその後3回の打ち上げに成功したものの5回目の『CRS Orb-3』ミッションで爆発、墜落しました。

AJ26-62ことNK-33Aはロシアのロケット、ソユーズ-1(ソユーズ 2.1v)にも使用されています。

▼アンタレスロケット1号機の打ち上げ映像


以下はNK-33の参考資料

▼放置されたNK-33。被せられているのは放射性廃棄物カバー。
放置されたNK-33

▼NK-33の燃焼試験。場所はロシアもしくはウクライナ。
NK-33エンジンの燃焼試験

▼アンタレスロケットの第一段エンジン。下のエンジンには「NK-33(НК-33)」、上のエンジンには「AJ26-62」の文字が見えます。
2基のNK-33エンジン
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