遼寧号

中国で改修され現在空母として運用を目指している「遼寧」(写真)。元は旧ソ連が建造した空母なのですが、これを中国政府に代わって購入したという人物が「国から支払いが行なわれていない」と明かしているそうです。

【AFP=時事】中国初の空母となった旧ソ連時代の船舶を購入した中国人男性実業家が、船の取得にかかった1億2000万ドル(約142億円)分の費用を中国政府から返金されていないと主張していることが、20日の香港英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post)の報道で明らかになった。

AFPBB News
中国が改修した空母「遼寧」は中国でゼロから作られたものではありません。元は旧ソ連時代、1985年12月6日に起工し、1988年11月25日に進水した「ヴァリャーグ」であり、中国人がこの艦を購入し人民解放軍改装したものになります。

ヴァリャーグはソ連が崩壊した1991年12月以降、建造資金の供給が停止し建造中止を言い渡されていたものの、当時造船を行っていた黒海造船工場が投資し建設を進めていたといいます。しかしこれも長く続かず1992年3月には造船は全て停止したと言われています。
ヴァリャーグは海外に売却する方針がとられたものの極めて高額な価格を提示したとされ失敗。1993年にロシアは同艦を手放しウクライナの管轄下に置かれ放置されていました。

▼黒海から中国へ向け曳航されるヴァリャーグ
ヴァリャーグ

その後、ウクライナはスクラップとして2,000万ドルで売却すると提示したところ1998年になり中国が動きます。中国政府は人民解放軍退役軍人(バスケットボールチームに所属)の実業家『徐増平』氏をウクライナとの船舶購入の交渉役として抜擢します。徐氏は「マカオで『水上カジノ』に使うためだ」と購入理由を偽りヴァリャーグの買い取りに成功しました。その後ヴァリャーグは中国海軍へ引き渡されたといいます。

もちろんヴァリャーグ購入後、海上カジノとして使われることはなく現在の「遼寧」として将来的に空母として改装されます。

徐氏によると空母の取得の代金、及び輸送費について中国政府からは全く支払われていないと話しており、取得にいたるまでの流れを今回初めて明かしました。ちなみに、徐氏がウクライナ側に支払った資金元について謎のままで『徐氏は不動産業と観光業を主に「香港を拠点とする」実業家で、中国軍の軍事力を拡大させたいという動機によって関わった』とだけと伝えているといいます。