image

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、従来の化学ロケットとは異なり推進剤を全く必要としない新型推進機関「EMドライブ」の実験に成功したと発表しました。この推進装置が人工衛星等に搭載することで長期間推進力を得ることができ深宇宙へ行くことも容易になるとのことです。

NASAのJohnson Space Centerの研究チームが推進剤を必要としない宇宙船用の新しい推進機関「Electromagnetic Drive」の実験に成功していたことが専門誌NASA Spaceflightの記事により明らかとなった。

EMドライブは2001年にイギリスのSatellite Propulsion Research社が発表した新推進機関で、電力を利用してマイクロ波は放出することで推進力を得ようという考え方に基づくものとなる。

BusinessNewsline
今回NASAが開発したElectromagnetic Drive(EMドライブ)は文字通り電磁駆動(電磁推進機構)により推進力を得るという全く新しい装置になります。RF共振器スラスタなどと呼ばれるこの装置に必要なものは電力です。電気エネルギーを装置に供給し続けることができれば装置が壊れるまで推力を発生し続けることができるという特徴があります。

実はこの装置、Satellite Propulsion Research社が発表した当時「推進剤が無しでは十分な推力を得ることができない」、物理学者から「運動量保存の法則と矛盾している」などとバカにされ完全否定されていたといいます。しかし、2007年に中国西北工業大学(NWPU)がEMドライブについて独自に数学的シミュレーションを行った結果、Satellite Propulsion Research社がこれまで主張していた実験結果に近い数値が出たとし、EmDriveの試作器を建造中しているなどと発表していました。

そして今回、アメリカのジョンソン宇宙センターは真空装置を用いてテストしたEMドライブ装置を稼働したところイオンエンジンと同等の推力を出すことが可能なことを実証したと発表しています。(ただし、今回の実験内容についても反論もあるとされている)

▼NASAの実験装置
NASAのEMドライブ

何れにしてもEMドライブが実際に推進力を発生させた場合、原子力発電等で2MW程度の電力があれば火星まで約70日。これまでの化学ロケットよりも半分以下の短い時間で到達することができる計算になるそうです。
その他にも地球を周回する人工衛星や国際宇宙ステーションなどは定期的に高度を押し上げる必要があったのですが、EMドライブが搭載できれば安価で長期間の運用が可能になるという利点があるとのことです。