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アポロ宇宙船が月面に降り立つ前の1966年に打ち上げられたのはMOL(Manned Orbiting Laboratory:有人軌道実験室)という世界初の宇宙ステーションになるはずだったモックアップです。今回はどのようなものだったのか機密解除となったこの宇宙ステーションを紹介します。

米国家偵察局(NRO)は2015年10月22日、1960年代に計画されていた軍用の有人宇宙ステーション「MOL」(モウル)計画の機密を解除し、当時の文章、写真などを公開した。

 MOL(Manned Orbiting Laboratory)は、1960年代に米空軍が計画していた軍用の有人宇宙ステーションで、表向きは軍人の宇宙飛行士によって科学実験などの行うことが目的とされていたが、実際のところはソヴィエト連邦の写真を撮影することを一番の目的としていた。当時は無人の衛星よりも、人間のほうが効率が良いと考えられていた。

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1966年11月3日、ケープカナベラル空軍基地から打ち上げられたのは人軌道実験室(以下MOL)と呼ばれる無人宇宙ステーションのモックアップです。これは後に続く実物のMOLを打ち上げるための試験に過ぎなかったのですがこの打ち上げを最後に実物は打ち上げられることはなく、アポロが月面に降り立ったその年1969年に計画が中止されました。

この計画は表向きは現在の国際宇宙ステーションで行っているような科学実験を行うというという目的で開発が進められていたものの、実験スペースのようなものは搭載されておらず記事にもあるように実際は大型の光学カメラが搭載されており有人による東側諸国を撮影することが目的でした。

▼地上で撮影された訓練の様子
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計画ではタイタン3Mロケットを使用し2名の宇宙飛行士が乗り込んだジェミニ宇宙船とMOLを一緒に打ち上げ、その後宇宙空間で30日間軍事偵察を行ったのち帰還するというものでした。1967年までにこの計画に携わる17人の宇宙飛行士が選ばれ1970年に実物の打ち上げが計画されたものの、無人偵察衛星の技術が向上したことを理由に全計画が中止されました。

その後、ソビエトが1971年4月19日に世界初の宇宙ステーション「サリュート1号」を打ち上げ、1973年5月14日にサターンVロケットを改造したアメリカ初の宇宙ステーション「スカイラブ」が打ち上げられています。

今回の機密解除を受け米国家偵察局(NRO)のホームページにはこれまで公開されていなかったMOLの大量の写真と動画、資料が公開されいるのでどのようなものか目を通されてはいかがでしょうか。

NRO - Declassified Records: GAMBIT and HEXAGON Histories