スカイロン

旅客機のように滑走路から離陸し宇宙に行き再び滑走路に戻ってくるというこれまでにないスペースプレーン「スカイロン」を開発しているリアクション・エンジンズ社。この機体について大手の軍需企業BAEシステムズが出資すると報じられています。

リアクション・エンジンズ社によるとイギリスに本社を置く世界3大軍需企業の1つ『BEAシステムズ』は同社の発行株式の20%を取得したうえで2060万ポンド(約39億9000万円)の出資を行うことが決まり、今後両社間で開発が最も困難なエンジン「セイバー」について協力すると発表しました。

BAE: 次世代ハイブリッドロケットエンジン開発のReaction Engines社に出資 - BusinessNewsline

スペースプレーン「スカイロン」は旅客機のような胴体に小さい翼と2基のエンジン「セイバー」を搭載しています。セイバーはエアブリージング式ロケットエンジンと呼ばれるもので、2つの燃焼モードに切り替えることができる次世代エンジンとなっています。
具体的には離陸から大気圏内飛行時には大気中の酸素と機内の機体水素を使いマッハ5.4まで加速し、その後ロケットモードに切り替え機内液体酸素・水素を燃焼させ通常の液体燃料ロケットのように宇宙空間へ飛び出すというものです。最高速度はマッハ15としています。

▼スカイロンの機体構造
③の赤い部分が液体水素の燃料タンク、青の④が液体酸素の燃料タンク、中央の⑤が衛星を収めるスペースになります。
スカイロン_2

ペイロードについては高度300kmの低軌道に15トン、国際宇宙ステーション軌道に11トンと日本のH2A204型と似た打ち上げ能力があります。リアクション・エンジンズ社によるとスカイロンは宇宙から帰還した場合、2日あれば再度宇宙へ向かうことができるとしており打ち上げコストについても従来のロケットの1/10。ペイロードスペースを旅客スペースに置き換えれば60人前後を宇宙に送り出すことができるとしており、価格も旅客機のファーストクラスとビジネスクラスの中間くらいに抑えられるとしています。

スカイロンについてはこれまで日本のJAXAにあたる欧州宇宙機関 (ESA)も資金の提供やエンジンの開発を行っており、2013年にはイギリス政府が試作機の製造に6000万ユーロを出資しています。
問題はやはりエンジンの開発にあるのですが現代の技術で理論上開発できないことはないとされており今年4月には米国空軍研究所(AFRL)がスカイロンプロジェクトについて「理論的には実現可能だ」としており大きな可能性を秘めていると発表しています。

リアクション・エンジンズ社によると、現在セイバーの実証モデルを開発しており、順調に開発が進んだ場合は2025年までにこのエンジンを搭載したスカイロンの初飛行試験を行うとしています。



▼実験段階のSABRE(実物とはサイズ等は異なる)


BAEシステムズは従業員数93,000人を越える企業で軍事分野に関しては2009年時点の売上高は332億5000万ドルとなっており、米ロッキード・マーティンに次ぐ世界2位の事業規模を誇っています。