BN-800型高速炉_1

ナトリウム冷却高速炉として建設されたロシアのベロヤルスク原子力発電所が今月10日、商業運転を開始したと発表しています。(写真は建設時のもの)

ロシア国営のPravdaが報じた内容として、ウラル地方にあるスヴェルドロフスク州に建設されたベロヤルスク原子力発電所が商業運転に入ったと報じています。

ロシア、「BN-800型」高速増殖炉の商用発電を開始・高速増殖炉の商用運転は世界初 - BusinessNewsline

ベロヤルスク原子力発電所はナトリウム冷却高速炉(記事には『高速増殖炉』とされているものの正しくは高速炉)として開発が進められた原子炉となります。原子炉はBN-800型高速炉というもので実験炉が開発されたのは旧ソ連時代の1981年で35年余りの歳月をかけようやく商業運転を開始することに成功しました。
現在の出力は235MWと最低出力で稼働しており今月末にも864MWの最高出力まで移行するとしています。

▼BN-800型高速炉
BN-800型高速炉_2

この原子炉は日本の福井県にある高速増殖炉もんじゅのようなナトリウムを冷却材に使用したものでBN-600型高速炉の既定出力を600MWから864MWに増加させたものがBN-800型高速炉になります。2020年には更に発展させた高速増殖炉BN-1200を開発し商業運転を目指します。この型の原子炉で使用する燃料は全てMOX燃料です。

高速炉は冷却用にナトリウムを使っていることで熱輸送能力も高く、通常の原子炉に比べて最終的に得られる電気エネルギー量が多くなる特徴があります。

▼BN-800型高速炉の断面構造
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高速増殖炉

高速増殖炉も同じく一般的な原子力発電所から出される使用済み核燃料からウランとプロトニウムを抽出しプルトニウムと劣化ウランを混ぜて作られたMOX燃料により発電(プルサーマル)を行います。高速増殖炉ではMOX燃料を使用すると燃料として再生可能なプロトニウムが増殖することでウランの利用効率を約30倍ほど高めることができるとされています。またプルトニウムをMOXで核分裂させた場合、半減期30年の核分裂生成物に変換することもできるためプルトニウムを消滅させる手段としても高速増殖炉は使用されます。

ロシア以外でも米国、フランス、イギリス、ドイツ、日本でも高速増殖炉の研究は行われているもののそのほとんどが開発中止または延期されています。