アメリカの基幹ロケット「アトラスV」の打ち上げに使用され制裁処置により輸入が規制されているはずのロシア製ロケットエンジン『RD-180』についてロケットを運用しているULA社は追加輸入を再開するという発表しているそうです。
ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社は2015年12月23日、同社が運用する米国の基幹ロケット「アトラスV」で使われるロシア製ロケット・エンジン「RD-180」を発注したと発表した。ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社とはロッキード・マーティン社とボーイング社の合弁事業で、一般的な人工衛星の他にはアメリカが使用する軍事衛星の打ち上げは基本的にULAのアトラスVロケットが使用されています。
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実はこのロケットのメインエンジンはロシアが1999年までに作り上げた『RD-180』が使用されておりその輸入及び販売のみアメリカのプラット&ホイットニーとロシアのNPOエネゴマシュの合弁企業『RD AMROSS』です。
しかし、ウクライナのクリミア半島を強制的に併合したことを受け、アメリカはロシアに対して宇宙に関して国際宇宙ステーションに関わること以外全ての宇宙交流は停止するという制裁処置を発動しました。これを受けロシア側も民間衛星の打ち上げを除くRD-180エンジンの輸出を停止すると発表していました。
▼アトラスVロケット
この制裁処置について、記事によると「米国議会は制裁として、軍事衛星の打ち上げに使うためにRD-180を輸入、使用することを禁止する制限を課していた」などとしています。また、これに一枚噛んでいるのはあの『スペースX』という最近良く耳にする民間企業です。アメリカの全面的な制裁処置が実行されたにもかかわらずULAは輸入を続行するような行動をとっていたらしくスペースXが訴えたところ裁判所はULAに対しNPOエネゴマシュとの一切の取引を禁止するという命令を下しました。
この裁判がその後どうなったのかは分からないのですが、実は去年2015年10月に米国防総省はRD-180の輸入禁止制限を緩和する方針を明らかにしており(参考)、同年12月16日には輸入禁止処置について2016年9月30日以降に撤廃するという動きがあったようです。
しかし、ULAは何故か今から輸入を再開するとしているそうで、同社は「(ロシア側が輸出を許可するとしていた)民間の商業打ち上げのために使用する」とだけコメントしているといいます。
▼燃焼試験中のRD-180
かなり複雑なことになっているのですが、制裁に対しては軍事衛星を運用している米空軍も反対しています。米空軍はアトラスVに変わる代替エンジンを行う企業に対し全面的に協力するとしているものの、2019年を予定している代替エンジン及びそのエンジンを使用する代替ロケット『ヴァルカン ロケット』の開発の遅れが生じた場合、軍事衛星の打ち上げ滞り国防支障がでるとして不測の事態を回避するために複数基を一括購入をするべきだなどと主張していたことがあります。(参考)