アリアン5

宇宙に物資を打ち上げるロケットは複数存在していますが、その中でもトップレベルの出力を誇るのは欧州宇宙機関『ESA』が運用しているアリアン5というロケットです。今回は珍しい映像とアリアン5ロケットについて紹介します。

昨年11月17日、フランス領ギアナにあるギアナ宇宙センターから打ち上げられたのは、4基の欧州版GPS衛星『ガリレオ』です。打ち上げに使用されたのは欧州宇宙機関ESAが運用するロケットでお馴染みのアリアン5です。ESAはこの打ち上げで使用した映像を美しくまとめたものを先月末に公開しました。



アリアン5は10年の歳月と8000億円以上の費用が投じられ開発された大型ロケットで、元々は翼のついたスペースプレーン「エルメス」を打ち上げる目的のため開発されました。しかし、多額の開発費用と資金難が原因で有人打ち上げ計画が凍結。一方ロケット本体は性能は維持され開発が継続されました。

現在アリアン5はESAの主力ロケットして運用され続けており、2014年までは国際宇宙ステーションへ欧州補給機を打ち上げていた他、現在は高い打ち上げ能力を活かし大型の衛星を2基搭載同時に打ち上げるなどなど、民間企業の宇宙開発も支えている重要なロケットの一つとされています。

▼発射台に輸送中のアリラン5
アリアン5_1

アリアン5の打ち上げの能力は国際宇宙ステーションが周回しているような高度400km付近の低軌道に20トン。これはJAXAが運用するH-IIBの19トン(地上300km)を超える能力があり、アリアン5を超えるものはロシアのプロトン・ロケット22トン、アメリカのファルコン9 22.8トン、中国の長征5号 25トン、アメリカのデルタ4ヘビー 28トンしか存在していません。

同ロケットは1996年の1号機と2002年の14号機で打ち上げ失敗、1997年の2号機と2001年の10号機で一部失敗しているもののこれ以降は75回連続の打ち上げ成功となっています。


ESAは次世代ロケットとなる『アリアン6』の開発を続けており、設計を行っているエアバス・サフラン・ローンチャーズ社によると2016年2月の段階で設計は完了したと発表しています。アリアン6はアリアン5よりも打ち上げ能力を高めつつ、打ち上げコストをほぼ半減させるという野心的なロケットとなっています。
打ち上げ能力は静止トランスファ軌道へ10.5トン。これを9,000万ユーロ(約108億円)で行うとしており、人工衛星を2基搭載することで1基あたり約半額での打ち上げを実施します。1号機の打ち上げは2020年を予定しています。