ポリエチレン

手にしているスマートフォンからマウス、テレビ、ゴミ袋など多くの製品に使用されているのはプラスチックです。一方で分解が難しいという理由から特に環境面で問題視されることも多いのですが、なんとこのプラスチックを食べるという虫が見つかったと報じられています。

世界では、年間3億トンのプラスチックが製造されている。そのほとんどは自然に分解することなく、最終的には世界の隅々を汚すごみとなっている。このプラスチックごみの問題に、欧州の研究チームがちょっと変わった解決法を見つけたかもしれない。どこにでもいる普通の小さな虫が、40分でレジ袋に大きな穴を開けることを発見したのだ。

NATIONAL GEOGRAPHIC
この発見をしたのはスペインのカンタブリア大学、発生生物学者フェデリカ・ベルトチーニ氏。ベルトチーニ氏によると発見は今から2年ほど前、ミツバチの巣箱の手入れをしている時に巣に寄生していた蛾、ハチノスツヅリガの幼虫を取りビニール袋に入れていたといいます。この作業から1時間あまりが経った頃、再びビニール袋を見たところ幾つか穴が開いているのを発見したとのことです。

一般人であれば「幼虫が噛んで穴を開けたのかな」と思ってしまうのですがそこは生物学者。実はこの蛾が何故ミツバチの巣に寄生するのかも知っており幼虫は蜜ろうを食べて成長しているそうです。蜜ろうはビニール袋と同じように炭素原子からなる構造をしていることから、もしかしたらプラスチックを食べるのではないかと直ぐに予想できたそうです。

研究を進めた結果、やはりハチノスツヅリガの幼虫はプラスチック(ポリエチレン)を食べ分解していたことがわかったそうです。その量としては45日間で100匹あたり5.5グラム程度だったとしています。

分解よりもリサイクルするべき?

記事によると、一般的に自然に分解されない(されにくい)とされるプラスチックの有効な処理方法を見つけたということになるのですが、そうとも言い切れないとしています。確かに厄介な素材であることは間違いないもののポリエチレンは現在リサイクルが可能で1トンあたり500ドル(約5.1万円)で買い取ってくれることもあるため、わざわざ幼虫を育ててまで分解させるという方法ではコスト的では割に合わないとしています。

他にもいるプラスチックを食べる生物

この発見は非常に興味深いものなのですが実はプラスチックを食べるという微生物はいくつか確認されています。これは2014年、オーストラリアのウエスタンオーストラリア大学の海洋学者チームが発見したものでオーストラリア沿岸や海洋で集められたプラスチックを走査型電子顕微鏡で観察したところ新種を含む14属の珪藻およびバクテリアが発見されました。
この微生物達はプラスチックを食べていたことが分かり、近年問題となっているマイクロプラスチック(マイクロビーズ)を含むプラスチックを予想では年間数百万トンあまり生物分解している可能性があると論文では説明しています。

▼発見されたプラスチックを食べる微生物
プラスチックを食べる海洋微生物