再使用型宇宙輸送システム_1

主にアメリカの民間宇宙企業で開発が進められている再使用ロケットについて日本政府の宇宙政策委員会は同様の性能をもつロケットの開発を検討すると報じられています。このロケットについてはH3の第一段として利用も考えられているとのことです。

政府の宇宙政策委員会は15日、打ち上げ後に回収して再び使うロケットなど「再使用型宇宙輸送システム」の実現に向け、小型実験機の準備を本年度から始めるなど検討を進めることを盛り込んだ宇宙基本計画の工程表の中間取りまとめを公表した。年末までに改訂する工程表に反映する。

SankeiBiz(サンケイビズ)
どのようなロケットになるのかは不明なのですが、JAXAの再使用型宇宙輸送システムの研究開発取組状況という2016年5月の資料によると、記事に書かれている小型実験機というのは全長7.7m、直径1.1m、重量3.1トン、推力4トン級エンジン1基と搭載したものでこれを高度20kmまで打ち上げ発射場付近に垂直着陸するというものが記載されています。

再使用型宇宙輸送システムの研究開発取組状況(JAXA提出資料より)
再使用型宇宙輸送システム_2
資料によると『最新の世界動向を踏まえ、JAXA横断的な体制で、H3ロケット等の次の宇宙輸送技術の確立を目指し、1段再使用による低コスト化を検討』としています。

また別の資料『再使用高頻度宇宙輸送システムの研究 - JAXA 宇宙科学研究所』というものではこれとは異なり『本研究では将来の単段式宇宙輸送システムを目指すべき輸送システムのゴールであると考え、打ち上げ性能を重視し、着陸に必要な推進剤を最小限とする宇宙輸送システムの飛行方式について研究する。』というものもあります。この単段式宇宙輸送システムとはロケットを上空で分離せず1段目のみで人工衛星を打ち上げるものになります。

再使用ロケット

不可能と言われていたロケットの再使用を実際に行っているスペースX。同社はファルコン9ロケットの第一段を回収を行なっており今年に入ってからは再整備されたものを使用し人工衛星を打ち上げ再回収されるなど技術開発を続けています。

それ以外の日本を含め世界で運用されているロケットについてはほぼ全て使い捨て型となっています。これは文字通りロケット本体やエンジンなどを1回の打ち上げでのみ運用し次回の打ち上げはまたゼロから製造するというものです。

▼ヴァルカンロケットの再使用ロケット


しかし、再使用可能なファルコン9ロケットの登場で人工衛星の打ち上げコストが大幅に安くなると言われており、他にはアトラスロケットの後継機となるヴァルカンロケットはエンジン部分のみの回収・再使用、欧州ではエアバスの「Adeline(アデリーン)」でもエンジン部分のみ回収・再使用するロケットが開発されています。
何れにしても再使用ロケットは従来の使い捨てロケットに比べ打ち上げコストの大幅な削減を行えるとされ国内企業や他国の人工衛星を打ち上げる商業ロケットを目指す場合、ロケットの再使用は今後避けて通ることは出来ないものと考えられます。

(2017年6月28日 正しくリンク先を閲覧できなかった項目を修正)