ディープスペースゲートウェイ_1

アメリカ航空宇宙局(NASA)が今後建設するとしているのは月軌道上を周回する新たな宇宙ステーション「ディープ・スペース・ゲートウェイ」です。この宇宙ステーションに関しロシアの宇宙機関にあたるロスコスモスはこの計画に参加することで合意したなどと報じられています。

2025年頃に国際宇宙ステーションの引退が囁かれているのですが、今後の宇宙開発として各国の宇宙機関は次の目標として月、もしくは火星に焦点を当てています。

NASAとしてはディープ・スペース・ゲートウェイ(Deep Space Gateway:DSG)という宇宙ステーションを月軌道に建設することでここから発進する火星有人探査を中心とした深宇宙への新たな宇宙開発を目指しているのですが、ロシアメディアによるとロシアのロスコスモスは「ディープ・スペース・ゲートウェイ」の建設に関し米ロが協力することで合意した」などと報じています。

月軌道上の新基地建設で協力=火星探査の中継点-米ロ:時事ドットコム


本当に合意したのか

簡単に調べた限り今のところNASAから「ロシア側と合意した」などという文言は調べることはできなかったのですがロスコスモスが主張しているような合意に至ったのでしょうか。

実はロスコスモスは過去にも先走った形で発表することが多々確認されており、例えば2015年には2025年前後に引退すると言われる国際宇宙ステーションに関して「新宇宙ステーションを建造することでNASAと合意に至った」などと大々的に発表していたもののNASA側は「強調をめぐる議論は行われた」というだけに留まりロシア側が発表した「合意」はされていなかったことが明らかになっています。それ以降、現在もそのような形で新たな宇宙ステーションを共同で運用するなどという報道は行われていないと思われます。

▼ディープ・スペース・ゲートウェイから切り離されるディープ・スペース・トランスポート(右側)
ディープスペースゲートウェイ

アメリカの有人火星探査、ロシアそして日本は

アメリカの有人火星探査については少なくともスペースシャトルがまだ現役だった頃から進められていたのですがNASAはこれをアメリカ単独で行うという方向性で計画を進めています。後にオリオン宇宙船は欧州宇宙機関『EAS』の協力が入ることになったものの、「ディープ・スペース・ゲートウェイ」から火星に向けて発進する「ディープ・スペース・トランスポート」は欧州の技術協力は無いと考えられやはりアメリカ単独で行うという印象を受けます。

何れにしてもロシアはかねがねまずは月面開発を行った後に有人火星探査を行うとしており、開発されている新型宇宙船『フィディラーツィヤ』も月面探査を目的に開発されていました。

また日本についてはディープ・スペース・ゲートウェイ計画に参加し月面間を行き来できるという着陸機の開発。無人探査技術でNASAの月面探査計画に貢献した上で将来的に日本人宇宙飛行士の月面到達を計画していることも明らかになっています。(参考)



NASAはこれまで小惑星探査を行い有人火星探査を行うとしていたものの、この計画を撤回し現在はディープ・スペース・ゲートウェイを建設し深宇宙への探査、有人火星探査を実施するとしています。宇宙ステーションは特に早ければ2022年6月1日にも現在開発中のスペース・ローンチ・システムという強力なロケット使用し有人宇宙船『オリオン』と共に最初のモジュールを打ち上げ軌道に投入します。
翌年2023年頃には居住モジュールを接続し月軌道上で10~20日間の滞在を行う予定です。その後、3回目でロジスティクスモジュールを4回目のドッキングでエアロックモジュールを運び完成となります。


追記
NASAはロスコスモス側と合意したとの声明を発表しました。
NASA, Roscosmos Sign Joint Statement on Researching, Exploring Space | NASA