アンガラA5

ソユーズ宇宙船に変わる新型有人宇宙船の打ち上げをはじめ、運用している様々なロケットを1本化していこうというコンセプトで開発されたロシアのアンガラロケット。しかし、今後2020年までの打ち上げは予定はわずか2回。いったい何があったのでしょうか。

ツィクロン、ロコット、ゼニット、プロトン、ソユーズなど様々なロケットを運用しているロシア。これらロケットは有人宇宙船『ソユーズ』の打ち上げから国際宇宙ステーションへの物資輸送、人工衛星の打ち上げなどに使用されています。

現在ロシアではソユーズ宇宙船に変わる有人宇宙船『フィディラーツィヤ』の打ち上げを予定しており、この宇宙船の打ち上げをアンガラロケットで実施する予定です。もちろん人工衛星の打ち上げもこのロケットで行う予定で、アンガラロケットはユニバーサル・ロケット・モジュール(URM)という補助ロケットを増減させることで様々な打ち上げに対応する等、打ち上げコスト削減も行うことが目的でした。

しかしアンガラロケットは2014年に『アンガラ 1.2PP』と『アンガラ A5』の2度のテスト打ち上げが実施されて以来、打ち上げは1回も実施されておらず、今年『アンガラA1.2』という小型ロケットのテスト打ち上げが予定されているものの、その次の打ち上げが2020年となっており事実上開発が停止しているものと考えられます。

▼2014年12月に実施されたアンガラ A5の打ち上げ


なぜアンガラロケットはこのような状態に陥ったのか。ロシアでは国際宇宙ステーション引退後の宇宙開発は月面有人探査を目標としています。しかし、最近想定された月面探査ではアンガラシリーズでは打ち上げ能力不足が指摘されていました。また2016年にはアンガラ A5Vロケットでは月面探査計画に使用するには無理があり危険が生じる可能性があるとしており、事実上アンガラシリーズの開発は中断し新たな打ち上げ能力が2倍以上の強力なロケットの開発にシフトしていると宇宙専門サイトでは報じられています。

RussianSpaceWeb.comによると、ロシア政府が新しい中型ロケットの開発に資金提供を行うことを過去に決定しておりこれは最終的に超重量級打ち上げロケットの基礎になる可能性があるとしています。具体的にその中型ロケットとは『ソユーズ5』と呼ばれるもので第一段にRD-171MVエンジンを1基、上端にRD-0124MSを搭載。高度200kmの低軌道に18トン、静止軌道へ2.5トンの打ち上げ能力があります。
ソユーズ5はゼニットロケットやアメリカのファルコン9ロケットよりも安価なロケットになるといわれており、現在ゼニットロケットの打ち上げに使用しているバイコヌール宇宙基地の発射台を改修することで打ち上げを実施する予定です。

ソユーズ5
Photo:RussianSpaceWeb.com
これをベースに開発される超重量級打ち上げロケットは、ソユーズ5の第一段を補助ロケットとして複数搭載することで最大で低軌道に108トン、さらにアップグレードすることで最大150トンの打ち上げ能力を発揮することができるとしています。

▼超重量級打ち上げロケット。左から地球低軌道に50トン、88トン、108トン
超重量級打ち上げロケット
Photo:RussianSpaceWeb.com
こちらの計画ではソユーズ5の打ち上げを2022年に予定しており2033年にはロシア人宇宙飛行士と月面着陸機が発射可能としています。

アンガラロケットは結局どうなってしまったのかについてはよくわからないのですが、仮にソユーズ5ロケットが「ファルコン9ロケットよりも安価なロケットになる」とするのであれば有人打ち上げを予定していたアンガラA5などの構成は既に不要になったと予想できます。

参考:RussianSpaceWeb.com