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国内の複数メディアによると2020年以降に建設される月軌道の小型宇宙ステーション計画に参加した上で日本人初の有人月面探査を実現する方針を固めたと報じられています。

政府は、米国と協力して月面の有人探査を目指す方針を固めた。

米国が2020年代後半に建設を計画している月軌道上の宇宙基地に参加し、日本人飛行士の月面探査を実現したい考えだ。宇宙政策を議論する政府の専門家会合で近く、こうした方針をまとめた報告書案を示す。

YOMIURI ONLINE
この構想は宇宙航空研究開発機構(JAXA)により今年6月末に発表されていたものなのですが、10月にはJAXAが提案した日本人の有人月面探査に関して膨大な予算がかかるなどの理由から文部科学省は議論を先送りしていたものです。

今回報じられた内容からは具体的なことはわからないのですが「(日本)政府は、米国と協力して月面の有人探査を目指す方針を固めた」と書かれていることから、国際宇宙ステーション退役後の日本の宇宙開発はアメリカ主導の月軌道宇宙ステーション『ディープ・スペース・ゲートウェイ(DSG)』に参加し、アメリカと共に初の有人月面探査を実施するという目標になっているものと考えられます。

▼月軌道の宇宙ステーション、ディープ・スペース・ゲートウェイ(ボーイング)


6月に提出されたJAXA案によると2019年度に月に送り込む無人探査機「SLIM」の技術を元に月軌道上のディープ・スペース・ゲートウェイから月に着陸することができる着陸機の開発を目指すとしており、合わせてディープ・スペース・ゲートウェイの居住モジュールに搭載することができる生命維持装置や放射線防護関連の開発を担うことでアメリカに貢献した上で有人月面探査の機会を得るという方針です。

▼SLIM (Smart Lander for Investigating Moon)
SLIM (Smart Lander for Investigating Moon)
Photo:JAXA

ディープ・スペース・ゲートウェイは有人月面探査ではなく最終的に有人火星探査を実施する中継基地として建設される小型の宇宙ステーションで既にロシアや欧州も開発に参加するなど国際宇宙ステーションと同じような国際プロジェクトになりつつあります。

宇宙ステーションの建設については2018年から2026年に4回の打ち上げを実施し完成させる計画となっているものの、建設そのものがアメリカ政府の承認は得ていません。またモジュールの打ち上げを担当するNASAの大型ロケット『SLS』に関しても打ち上げが延期されるなど既に計画に遅れが出ていると考えられ、JAXAが想定する2030年頃の有人月面探査が実施可能なのかは不明です。またアメリカとしては2030年以降に火星有人探査を目指しており並行して月有人探査を実施する余裕があるのかも不明です。