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宇宙空間に人工衛星を打ち上げるには液体もしくは固体燃料を燃焼する化学ロケットが使用されていますが、一方で直線または円形の建造で物体を加速させそのまま宇宙に送り込むというマスドライバーが研究されています。今回はそのマスドライバーで宇宙開発を計画しているスピンローンチ社が登場します。

海外の複数メディアによるとアメリカのベンチャー企業スピンローンチはマスドライバーの開発について最近3,000万ドル(約32億円)を調達したなど報じられています。また先月ハワイ州連邦議会はスピンローンチに関して、支援として2,500万ドルの債券を発行する法案も提出されているとのことです。

Spinlaunch is using large centrifuges to accelerate to payloads into space – target $500,000 per launch | NextBigFuture.com

スピンローンチが開発を進めているのは一般的にマスドライバーと呼ばれる打ち上げ方法です。通常ロケットは液体燃料や固体ロケットを燃焼させ宇宙に向かうのですが、マスドライバーは地上に設置した施設から射出するという方法になります。
スピンローンチによると、1回あたりの打ち上げコストは50万ドル(約5,300万円)程度としています。

マスドライバーは幾つか種類があるのですが、スピンローンチが開発を進めているのは『スリンガトロン』という方式です。これは渦巻状のレールを用いて振動させることで内側から外側に行くに従い加速させるというものになります。


こちらがスリンガトロンの加速方法になります。

マスドライバーの欠点の一つとして施設の規模が極めて巨大になることです。記事によると、スリンガトロンの場合、仮に500kgの発射体を打ち上げるにはリングの半径が640メートル必用で秒速8km(28,800km)という速度を達成することができます。この時の最大重力加速度は1万Gになるとのことです。

▼射出される弾体
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その上で、スピンローンチはとしては最終的に秒速7kmまで加速させるスリンガトロンを開発し宇宙に物資を送り込む装置の開発を目指しているとのことです。また、重力加速度は4~6万Gほどになるとしており、打ち上げられるのは人工衛星などではなく水や燃料、建築材料といったものに限られ現在のロケットに置き換わるようなものではないとしています。

マスドライバーは画期的な打ち上げ方法になるのですが現時点でそこまで水や燃料、また建築材料といったものはそれほど必用とされていません。また仮に人工衛星を搭載できたとしても重力加速度に耐える構造にしなければならず開発コストがかさむという理由からも、打ち上げがどれだけ行われるのかは未知数です。