核融合

次世代の発電技術として重水素などを用いた核融合発電というものがあります。現在は発電するどころか核融合反応を継続させること自体が難しいという状態なのですが、マサチューセッツ工科大学は発電を行える発電炉を15年以内に建設すると発表しています。

共同通信によるとマサチューセッツ工科大学は今月8日、核融合炉を用いた発電所の建設に関して20万キロワット(200MW)の出力を持つ核融合発電炉を今後15年以内に建設すると報じています。記事によると、開発費用としてイタリア企業から5000万ドルの出資がありこれを元に開発を進めていくとしています。

建設するのは超高温のプラズマを磁場により閉じ込める『トカマク型』で、新たに開発した新素材を用いて核融合炉を開発するとしています。
今回の発表に関してMITの担当者は「核融合炉は地球温暖化や将来のエネルギー問題を解決できる重要な技術。ITERだけには頼ってはいけない」などと主張しています。


現在世界の核融合技術は発電以前の「実用化を目指す」という研究段階です。その中でも最大の研究施設として『ITER(イーター)』が建設されています。ITERは日本、アメリカ、インド、韓国、中国そしてロシアが核融合エネルギーの実現性を研究するための実験施設で、現在の予定では運転開始を2025年12月核融合運転は2035年12月となっています。ただ、建設されているのはあくまで核融合を行うものであり発電およびその実証は行いません。そのため発電実証などの研究は少なくとも2035年以降ということになります。
また建設が既に年単位で遅れており、費用が約2兆1000億円と想定され莫大なコスト(正しくは2035年までの全体的なコスト)に批判的な意見も寄せられています。

▼MITが2015年に発表したARC
ARC

一方MITが開発する核融合発電炉は発電すら行えないというITERの核融合炉よりも一歩先を行く技術ということになります。具体的にどのような核融合炉になるのかは2015年8月に、『10年以内に実用化できる新しい反応器「ARC」』というものを考案し発表されていたことがあります。
ARCは「affordable(安価)」「robust(頑丈)」「compact(コンパクト)」の頭文字から名付けられたもので、磁場を発生させる装置をバリウム系銅酸化物の超伝導体テープを用いることでより強い磁場を発生させることができる他、核融合炉の施設全体の規模を小さくできることができます。(参考)

核融合発電は石炭や天然ガスのような火力発電所のように地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を排出せず、反応を維持させること自体が難しいため原子力発電所のように制御不能に陥り暴走することもありません。放射性廃棄物がでるものの原子力発電所よりも1/100以下、また半減期が長いものは排出しないといいます。最近注目されている再生可能エネルギーのように不安定な発電方法ではなく、設置に広大な面積を必要としません。

発電能力についてはITERの発展型として将来的に5,000MW、原子炉約4~5基分の発電能力のある核融合炉が開発される予定です。