球磨川

街中を流れる川をたどれば上流にはダムが建設されています。それは発電用のものから利水用などいくつか種類があるのですが、熊本県では本格的なダムとしては日本で初めて撤去工事が終了したと報じられています。(写真は球磨川)

国内初の本格的なダムの撤去となった熊本県八代市坂本町の県営荒瀬ダムの工事が終わり27日、現地で撤去完了式典が開かれた。初の撤去事例としてその過程が克明に記録された他、瀬や砂州などかつての清流が復活し、生態系への好影響が期待されている。

毎日新聞
ダムといえば大きさや見た目がそれぞ違っており、例えば黒部ダム(黒四ダム)はダム自体が観光地になっているなど発電以外も観光資源としても利用されることもあります。そんなダムに関して熊本県では日本国内では初の事例だという本格できな発電ダムの撤去が完了したとのことです。

荒瀬ダム_1

撤去された荒瀬ダムは高さ25m、幅210mの発電のために建設されたダムで着工は1953年、完成が1955年です。このダムの撤去が要請されたのは2002年。それから2010年~15年の5年間で撤去する予定となりました。しかし、知事が交替するなどして2008年に撤去計画が凍結。しかし、2010年にはこれが撤回され撤去へ動き出すという二転三転した経緯があります。
撤去工事は元の計画から2年遅れの2012年に開始されます。

この手のダムがなくなることで環境への影響はどのくらいでるのか注目されるのですが、Wikipediaによるとこのようなことが掲載されています。
2012年9月1日、撤去工事が開始された。その後は川の水がきれいになりはじめ、長年ダムに溜まっていた土砂が海に流れたことで、干潟でも生態系の再生が始まった。貝類の漁獲量が上昇し、姿を消していたウナギも獲れるようになった。
2016年夏には流域住民による灯籠流しが行われた。カゲロウ、カワゲラといった水生昆虫などの生息数も回復。ダムに近い支流との合流点で熊本県が川底の生物を調査したところ、2014年度は69種類と、ダムがあった10年前(2004年度)に比べほぼ7倍に増えた。
このように結果的に生態系がもとに戻っただけではないということが書かれています。

ダム撤去の流れはアメリカで広まっています。アメリカでは2016年時点で過去20年間で撤去されたダムは865基で2014年の1年間に72基が撤去されています。もちろん改修し運用されるケースもあるのですが、米国民意識は『自然環境の再生』に関心が高まっていることから改修ではなく解体・撤去の方針がとられるケースも多いと言われています。



撤去にかかる重要なお金の問題についても紹介すると、荒瀬ダムの撤去にかかった総事業費は約84億円です。1955年以降(?)、荒瀬ダムは年間1億円あまりの利益を出していたとのことです。またダムの撤去が凍結される前、「2010年~2015年までの5年間で撤去する」と計画が立てられたときの総事業費は47億円を予定していました。