マーズ・ヘリコプター_1

2020年、NASAが打ち上げ予定の火星探査車に小型のドローンを搭載し火星で飛行させると報じられました。地球の1/100程度しかない大気で飛行させるのは難しいと考えられるのですが、どのような運用をおこなうのでしょうか。

今月12日、アメリカ航空宇宙局(NASA)が発表したのは火星探査車『マーズ2020』に小型の二重反転プロペラを搭載した『マーズ・ヘリコプター』を搭載し、火星で飛行実験を行うというものです。

Mars Helicopter to Fly on NASA’s Next Red Planet Rover Mission | NASA

火星は地球の1/3程度の重力しかないものの大気圧も1/100程度しかありません。火星の地表付近であっても地球の地上30km上空の気圧しかなく地球上では高高度を飛行できる能力が必要です。そのため、ヘリコプターの胴体はソフトボールサイズで全体の重量はわずか1.8kg未満。プロペラは大型で地球上で運用するヘリコプターのおよそ10倍の回転速度という仕様になっているといいます。


マーズ・ヘリコプターは最近開発されたものではなく、2013年8月の時点でJPL(ジェット推進研究所)により技術開発が始まりました。2015年には試作機が映像として公開されていたのですがそこには7~80cmほどのプロペラを搭載した非常に大型のドローンが写し出されていました。

▼マーズ・ヘリコプター(2015年試作型)
マーズ・ヘリコプター
Crazy Engineering: Mars Helicopter - YouTube
JPLは4年に渡り再設計を行いテストを行ってきたとしているものの今回公開された映像からもマーズ・ヘリコプターの外見などの変化はなく、ほぼ同じようなサイズになっているもののと考えられます。

このような規模のヘリコプターを運用する理由に関してはいくつか理由があるのですが、まず火星探査車の進路を決定するために運用が考えられています。
マーズ・ヘリコプターが発表された2015年時点ではこのヘリコプターは探査車が移動する際にその移動ルートを作成するために使われるとし、仮にこのヘリコプターが運用できた場合、探査車が1日に走行できる距離は従来の3倍程度伸ばせると話しています。また丘の向こうなど探査車では移動が困難な地点や周囲の調査対象地点をドローンであらかじめ偵察することで、調査を行うべき対象なのか科学者の判断にも役に立つとのことです。
またヘリコプターにはカメラや温度センサー程度が搭載される予定としており、科学観測を行う装置は搭載されないとしています。

またNASAでは2022年以降に火星へ送り込まれる探査機に無人機『Prandtl-m』を搭載するという計画もあり、こちらは火星の地上610m付近で展開され滑空しながら最大で32km程度の飛行しながら地表を近距離から観測するという機体も開発されています。