ヴァージン・オービット コズミックガール

アメリカに本社を置くヴァージン・オービットは大型旅客機ボーイング747型機による空中発射ロケットの打ち上げは数カ月後するなどと報じられています。

当初の計画よりも初号機の打ち上げが若干遅れているのはイギリスのヴァージン・グループ傘下のヴァージン・オービットが運用を目指す旅客機を使用した人工衛星の商業打ち上げです。当初、初号機の打ち上げは2018年初旬を予定していたものの、この打ち上げはまだ実施されていません。

ヴァージン・オービットが開発を進めているユニークな人工衛星の打ち上げはどのようになるのでしょうか。運用方法としてはボーイング747型機の特殊機となる輸送用として5つ目のエンジンを搭載可能な機体を改造し、まるで戦闘機がミサイルを搭載するようにロケット『ランチャーワン』を搭載できるように1年ほどの歳月をかけ強化・改修を実施しました。


旅客機はコズミックガールと名付けられておりランチャーワンを機外搭載し上空まで運ばれます。つまり、通常のロケットでいうところのコズミックガールが第一段ロケットになっており、上空まで運ばれランチャーワンを展開、エンジンの燃焼が開始されそのまま宇宙を目指すという打ち上げ方法になります。
現在の開発状況としては母機となるコズミックガールは改修等は既に終わっているとしており、ランチャーワンも地上での燃焼試験等が実施されていることから、次はコズミックガールにランチャーワンを搭載した試験飛行、更に上空からのランチャーワンの展開などが行われるという段階です。

▼エンジンの燃焼試験

▼弾道ミサイルほどのサイズがあるランチャーワン(2018年6月撮影 公式ツイッターより)
ヴァージン・オービット ランチャーワン

具体的な打ち上げ方法に関しては、コズミックガールはロケットの打ち上げ地点まで移動し高度約10kmで機首を25度ほど上げてランチャーワンを展開。約4秒後にエンジンの燃焼を開始します。打ち上げ能力はどの方向に人工衛星を送り込むかで変わるものの、地球と同じ向きでは約500kg、地球を縦に周回する軌道(太陽同期軌道)では約300kgとしています。

コズミックガールは従来の旅客機を用いているなど、事実上の再利用ロケットのような打ち上げが可能なこともありランチャーワン1回あたりの打ち上げコストは約1200万ドル(13億円)と安価なものになっています。
単純に比較はできないのですが、打ち上げ価格の比較としてJAXAの強化型イプシロン(太陽同期軌道に590kg)では45億円です。ロケットラボのエレクトロンロケット(太陽同期軌道に150kg)で6.6億円などとなっています。

ただ、この手の空中発射ロケットの場合は母機を維持しなければならない費用がかかってくるため、同様の打ち上げを行っているオービタルATKでは打ち上げ契約の数の関係から想定されたよりも安価な打ち上げにはなっていないなどとも報じられていたことがあります。