プログレス補給船

国際宇宙ステーションでは地球では特異な環境下で様々な実験が行われていますが、この宇宙ステーションに関して、先日リブーストと呼ばれる加速による軌道修正が行われ地上からの高度が700mほど高くなったなどと報じられています。

ロシアの宇宙ニュースサイト『Космическая лента』によると、モスクワ時間6月23日午前11時過ぎに国際宇宙ステーションにドッキングしているプログレス補給船 MS-08に搭載しているエンジンを始動し、国際宇宙ステーションを加速させる『リブースト』を実施したとロシアの宇宙機関であるロスコスモスが発表しました。

Фото: Работа двигателей корабля «Прогресс МС»

このリブーストの作業に関してエンジンの始動時間は208秒で、国際宇宙ステーションは0.42m/s(時速1.5kmほど)増加し、最終的に高度は約700mほど押し上げられ現在地上404.9km地点を周回しているとのことです。

国際宇宙ステーションは地上400km前後を周回しているものの完全な真空ではなく僅かに地球の大気が存在しており、空気抵抗により常に減速しています。そのため他の人工衛星と同様にそのまま放っておくと次第に速度が下がり最終的には地球に落下してしまいます。これを避けるためプログレス補給船などを使用し国際宇宙ステーションを定期的に加速させる必要があります。

こちらが23日に行われたプログレス補給船によるリブーストの様子です。こちらの映像はロシアのオレッグ・アルテミエフ宇宙飛行士により撮影されたものなのですが、「軌道修正の様子」としているもののスラスターの噴射角度や燃焼時間から正しくは国際宇宙ステーションの姿勢制御の様子を捉えたものと考えられます。

国際宇宙ステーションのリブーストについては国際宇宙ステーションの進行方向に向かって実施されています。調べたところプログレス補給船によるリブーストはメインエンジンを使用しているのではなく、その周辺にある対角線上に搭載されている合計8基(2ペア、4基)のスラスターにより行われています。このスラスターはプログレス補給船のメインエンジンが故障した場合の補助としても使用可能なものです。


こちらがリブースト中の国際宇宙ステーション内部で撮影された様子です。このように宇宙ステーション自体が加速しているため、宙に浮いたものは後方側、つまりリブーストが行われている側へ移動してしまいます。

リブーストの様子に関しては2016年に国際宇宙ステーション滞在した大西卓哉宇宙飛行士によると「非常にゆっくりとした加速でしたが、久しぶりに身体で加速度を感じることが出来ました」とコメントしています。

▼欧州補給機(ATV)によるリブーストのイメージ。プログレス補給船でも同様のリブーストが実施されました。
国際宇宙ステーション リブースト