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有人宇宙船を運用する上で必ず登載されるのは打ち上げ時に何らかの不具合が発生した場合、直ちに乗員を避難させる打ち上げ脱出システムです。これはNASAが開発しているオリオン宇宙船にも登載されているものなのですが、試験が5月中旬まで遅れる見通しが報じられています。

宇宙飛行士が宇宙船に乗り込んだ地上付近から宇宙空間に達するまで宇宙飛行士らを安全に脱出させるオリオン宇宙船の打ち上げ脱出システム(LAS)。その試験の実施に関しトランプ政権で発生した連邦政府の操業停止の影響により、実施が数週間遅れる見通しとなっていると海外メディアが伝えています。

NASA working to minimize shutdown impact to Springtime Orion abort test – NASASpaceFlight.com

NASASpaceFlight.comによると、実施予定のものはOrion Ascent Abort-2(AA-2)という打ち上げ脱出システムの試験で、既に飛行試験に必要なハードウェアの多くは一部を除きフロリダ州にあるケープカナベラル空軍基地に運ばれているといいます。ただ、連邦政府の操業停止の影響で飛行試験用車両の組み立てが停止したことを受け、現在再開するまでにどのくらいの時間を要するのか把握できておらず試験の延期はほぼ確実となったとのこと。

▼AA-2のアニメーション

このAA-2は今年末、オリオン宇宙船の打ち上げ計画としては2回目となる探査ミッション『EM-1』と『EM-2』の間の時期に実施するとしていました。そのテストの結果次第で実際に続くオリオン宇宙船に宇宙飛行士を載せ打ち上げを行ういう計画だったといいます。ただ、今年の12月に実施予定だったものを今から1年半前に8ヶ月前倒しでAA-2を行う計画になっていたとしています。

▼AA-2で使用される脱出システムの一部。実際の有人打ち上げでもほぼ同じものが登載し運用されます。
オリオン宇宙船のLAS

オリオン宇宙船のLAS_1
打ち上げ脱出システムは宇宙飛行士を安全に打ち上げることを目的としたもので、現在開発されている宇宙船、例えばスペースXのクルー・ドラゴン、ボーイングのスターライナー、民間宇宙旅行を計画しているブルー・オリジンのクルーカプセルにも登載されています。

▼2018年10月に実施されたソユーズロケットによる脱出システム(参考)


過去、実際に事故が発生したことで作動した例は少なく最近では昨年10月にロシアのソユーズロケットで発生した程度でこれを含めても3回となっています。一方、複数回の事故を発生させたスペースシャトルではスペースプレーンとう特殊な形状であることからロケット推進により脱出装置は取っ払われており、結果的に複数の死傷者を出しています。