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身近にある様々な元素。もちろん私達の体を構成する元素もすべて太陽のような恒星で生成されているのですが、恒星が作り出すことはできない鉄よりも重い元素に関して、中性子星同士の衝突で誕生したことが観測結果として初めて分かったとしています。

簡単にまとめると
  • 観測されたのは13億光年離れた中性子星の同士の衝突
  • 衝突でストロンチウムに限っては地球質量の5倍程度が作られた
  • シミュレーションでは重元素が作られることは分かっていた
  • 実際に詳細なスペクトル分析が行われた初の研究となった
今月Natureで2017年に観測されていた中性子星同士の衝突という珍しい現象で、観測したデータを分析した結果、地球質量の約5倍というストロンチウムが作られていたことが分かったという論文が掲載されました。

Identification of strontium in the merger of two neutron stars | Nature

地球に大量に存在する鉄は恒星の中心で作られ、太陽のような恒星が作ることができる元素はこの鉄までです。しかし、ある特殊な現象が発生すると鉄よりも重い元素、例えば今回観測されたストロンチウムや指輪でお馴染みの『金』など宇宙を構成する元素が誕生することが分かっています。

問題はこのイベントがそう発生するものではなくこれまでは観測も難しかったという点です。今回観測されたのは地球から13億光年離れたGW170817という中性子星がグルグルと公転し合っていた連星で、これが距離を縮め衝突したした結果の観測データが用いられています。「間違いなく中性子星が衝突したのか?」という根拠についてはアメリカの2台の重力波検出器「Advanced LIGO」と欧州重力波観測所の重力波検出器「Advanced Virgo」により観測されており間違いはありません。

▼中性子星衝突後の様子
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この衝突は光のスペクトル分析が後に行われ、今回の研究ではストロンチウムが地球質量の5倍程度が生成されたのではいかという結果が出たとのことです。このような中性子星の衝突による詳細なスペクトル分析が行われたのは今回の衝突イベントが天文学初の研究だとしています。

中性子星は太陽よりも重い恒星がその一生を終えるときに形成される天体で、私達の太陽は赤色巨星になりつつガスを放出しそのまま『白色矮星』という天体になります。しかし太陽よりも8倍~29倍程度の天体では赤色超巨星になった後に爆発的現象が発生し、超新星爆発を起こし中性子星となります。さらにこれよりも重い恒星では超新星爆発の後にブラックホール(恒星ブラックホール)が形成されると考えられています。

鉄よりも重い元素については超新星爆発で作られることは分かっていました。そして更に特殊である中性子星同士の衝突やブラックホールに中性子星が飲み込まれる際に金やプラチナといった重い元素が作られ宇宙空間に撒き散らされるということも分かっていました。しかしこれらはあくまでPC上のシミュレーション結果として出ていたもので実際に観測はされていませんでした。