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アメリカの民間企業スペースXが開発を進めている有人宇宙船『クルードラゴン』について、アメリカ現地時間1月18日午前8時に実施すると報じられています。この試験は実際のロケットを用いて宇宙船を打ち上げ、大気圏内で宇宙船を切り離すという内容になります。

アメリカ航空宇宙局によると、この試験は打ち上げ脱出システム『LES』などと呼ばれている試験で、フロリダ州のケネディ宇宙センターにある39A発射台で実施されます。打ち上げに使用するのはスペースXが運用しているファルコン9ロケットです。



ファルコン9ロケットはクルードラゴン宇宙船を乗せた状態で打ち上げ、打ち上げから90秒後にロケットに問題が発生したという想定で意図的に打ち上げ脱出システムを作動させます。具体的にはファルコン9では空力抵抗が最も大きくなる最大動圧点(max Q)と呼ばれる高度約20kmで第1段エンジンを停止します。その後、クルードラゴンが切り離されロケットモーターを動作させロケットは離れます。クルードラゴンは最大で高度42~44kmに達すると予想されています。

一連の試験では、仮に宇宙飛行士を乗せた状態で打ち上げが失敗した場合、安全に脱出できるのか否か評価されることになり、正常に試験が終了した場合はようやく宇宙飛行士を乗せた飛行を実施することができます。現在の予定ではクルードラゴンの国際宇宙ステーションへの飛行は春から夏にかけ設定されているとのことです。

打ち上げ脱出システム

打ち上げ脱出システムはこの手のカプセル型宇宙船では必ず搭載されています。動作方法は宇宙船により異なるものの、ロケットモーターが搭載されておりこの推力でロケット本体から安全に離脱します。

過去、世界の宇宙開発で打ち上げ脱出システムが実際に用いられ宇宙飛行士が生還した例は2度あり、1983年9月26日のソユーズT-10-1、そして記憶に新しいと2018年10月11日のソユーズMS-10です。1983年の例ではロケットの打ち上げ前にロケットが炎上し爆発する数秒前に打ち上げ脱出を作動しました。2018年の例では打ち上げ時、補助ロケットの切り離しが正常に行われずロケット本体に衝突したことで自動的にプログラムが働き脱出に成功しています。

▼ソユーズMS-10における打ち上げ脱出システム動作例。1分23秒~


一方でスペースシャトルのような宇宙船の場合、構造上打ち上げ脱出の搭載そのものが難しく自力で機外に脱出しないといけないという極めて雑なものになっており、この機体における事故では乗員全員が死亡しています。

▼クルードラゴンによる脱出エンジンテスト
クルードラゴン_2

今回打ち上げるクルードラゴンには宇宙船本体に打ち上げ脱出システム用のロケットモーターが搭載されており、通常は打ち上げ後に毎回切り離れさ処分されるものが必要な場合にのみ動作し処分するという方法に変更され打ち上げコストの削減に繋げています。