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車の運転から日々の作業に至るまで、私達人間が100%力を発揮するには十分な睡眠が必要です。特に集中力不足からくるトラブルは非常に厄介なのですが、これに関してアメリカでは首に電気刺激を与えるだけという簡単な方法で寝不足からくる集中力不足を軽減できるというデバイスが開発されました。

Infoscitexおよび、アメリカ軍の空軍研究所は電気刺激を加えるこで睡眠不足の人が陥る集中力不足を軽減することができる方法として、迷走神経に対して体を傷つけない非侵襲的デバイスを用いた試験で寝不足の倦怠感を軽減することができたと報じられています。

Electric shocks counter sleep deprivation in tests on soldiers
Cervical transcutaneous vagal nerve stimulation (ctVNS) improves human cognitive performance under sleep deprivation stress | Communications Biology

記事によると、今回研究に使用したデバイスは、もともと群発性頭痛と片頭痛を治療するために米国での使用が承認されているもので、手に持つ事できるデバイスを首に押し当て首を通る迷走神経に弱い電気刺激を与えるよう設計されました。

今回の研究は迷走神経刺激装置により注意力や覚醒度に影響のある『青斑核(せいはんかく)』と呼ばれる脳領域の活動を調節することで、覚醒度を改善できるのかどうか研究されました。つまり、これまでの研究で迷走神経と青斑核が密接な関係があることがわかっていたらしく、この小さな装置が睡眠不足の被験者における認知能力を向上させるのではないかという仮説が立てられたものです。

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研究では米空軍の現役軍人40人を電気刺激を与えるグループ20人、偽の電気刺激を与えられた20人に分け、被験者は連続して34時間寝ないで試験に挑みました。この間、それぞれのグループは首に6分間弱い電気刺激を与え、この間、認知機能テストを複数回受けました。


研究結果としてはこのデバイスで電気刺激を受けた被験者、偽の刺激を与えた被験者を比較した場合、電気刺激を受けた被験者は疲労感が軽減され集中力やマルチタスクのテストでは良好な結果が得られたとしています。数値としては寝不足ではない人の平均より5%ほど低い結果にとどまり、偽の刺激を与えられた被験者は-15%ほど低下していたとしています。


研究者によると、この概念実証試験は紛れもなく迷走神経に電気刺激を与えることで集中力が改善できるという説得力のある結果が得られたと主張しています。ただ、実際の現場でどの程度役に立つものなのか、仕事など日常生活で利用できるものなのかは更に多くの研究が必要だとしています。

ちなみに迷走神経は脳から首を通って腹部に達する長い神経で、食欲から痛みの感覚まで様々なものに影響が与えることができるとして最近注目されている研究分野とされています。