LDSD

昨年6月に行われた「低密度超音速減速機」(Low Density Supersonic Decelerator:LDSD)という大気圏再突入の際に使用される新たなシステムについて、計画通り今年も試験されることが発表さました。

アメリカ航空宇宙局(NASA)が研究・開発を進めているのは宇宙から大気圏に再突入する際に展開する減速体というものです。これは見出しでも紹介したように「低密度超音速減速機(LDSD)」とよばれており、主に大気の薄い火星での使用を目的としています。

NASA: 火星の大気圏降下用の次世代減速体の2回目の大気圏再突入実験を実施へ - Technobahn



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試験内容は2014年6月に行われた内容とほぼ同じで、気球を使い地上120,000フィート(36.6km)まで運びエンジンを点火。高度180,000フィート(54.9km)まで上昇した後燃焼を停止しマッハ3.8でSIAD-R(超音速膨張式空力減速機)という“浮き輪”のような膜を膨らませ、十分に速度を落とした後にパラシュートを展開します。

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LDSD



こちらが昨年行われた第一回目の試験映像です。映像から確認できるようにパラシュートを展開後ズタズタに破れてしまい試験機本体が海上に激突してしまいました。


NASAが開発を進めている理由は冒頭紹介したように火星のように大気が薄い天体でも十分に減速できるよう空気抵抗を増やす必要があるためです。
具体的には火星は地球よりも大気が薄く1/100程度しかないため、現在の着陸方法では1トンを超える重量物を火星地表に送り込むのはほぼ不可能とされています。(NASAが送り込んだキュリオシティーは1トンで史上最大の4.5mの耐熱シールドが使われた)

NASAは将来火星への有人着陸を考えておりその重量は10トン以上。これを従来の耐熱パネルで行うとするとサイズは軽く10メートルを超える計算になり物理的にも打ち上げることは自体不可能とされていました。そこで最大限の幅を耐熱シールドで確保し足らない減速はLDSDのような拡張型にすることで解決しようとしています。