長時間潜水できるクジラ

人が息を止めていられる時間は長くて数分程度。一方、同じ肺呼吸を哺乳類にもかかわらず、クジラはアザラシは動きながら長時間息を止めることができます。人間と海生哺乳類はどこに違いがあるのでしょうか。

ある種のクジラは1時間前後息を止め、その間1000~3000mといった深海に潜ることができます。いったいどこにそれだけの酸素を貯めこむことができるのでしょうか。

リバプール大学で動物の機能を研究するマイケル・ベレンブリンク氏によると、クジラやアシカ、アザラシなど水中に潜る哺乳類は、筋肉中にあり酸素を貯めこむミオグロビンが人間の10倍程度あり、ある作用から長時間呼吸を止めていられることをつきとめました。

ベレンブリンク氏によると、これだけ多くミオグロビンは人間では考えられず、また人間の場合ミオグロビンの量が多いと糖尿病やアルツハイマー病などの慢性疾患になるとしています。ではなぜ海生哺乳類は同じような病気にならないのか。

研究チームによると、この問題を回避するためにミオグロビンが正電荷を帯びた状態になっているといいます。正電荷を帯びたミオグロビンにその強さに違いはあるものの潜水を得意とする海生哺乳類の全てから見つかったといいます。

「世界には水中に潜って食べ物を得てきた民族がいる。そして、中にはとても長く水中にとどまることができる人たちがいる。」ベレンブリンク氏は次の課題として、昔から海に潜る伝統がある地域の人々についてミオグロビンの量を調べ、海生哺乳類と同様の『進化』がみれるか確認したいとしています。

参考:National Geographic