月面原子力電池

2020年代後半から30年代前半にかけ実施されるのは有人月面探査です。一方でその活動を支えるための電力、特に身の回りの電力も含めてかなりの量が必要になることが予想できるのですがイギリスはロールス・ロイスと契約して月面使用できる原子炉を開発すると発表しました。

アポロ時代とは異なり身の回りで電力を消費する端末が増えているのですが今後の宇宙でも同様です。更に問題なのは月は地球に潮汐ロックされているため夜が連続で14日も続くことからソーラーパネルでの発電はかなり条件が悪いことになります。

そこで安定した電力を小型かつ大出力できる装置が必要不可欠になるのですが、そこで注目されているのは原子炉です。正しくは地球上の水を沸騰させる原子力発電とは若干異なり熱を電力に変える素子を用いた原子力電池、もしくは原子核崩壊の際に発生する熱をナトリウムヒートパイプで受け取りその熱でスターリングエンジンを稼働させる装置になります。

原子力電池については既に火星探査ローバー『キュリオシティ』に搭載されているような装置を更に高出力にしたようなものになります。記事では原子力電池とは記載がないため今回は後者の原子力の熱で別の何かを稼働させる装置と考えられます。

記事によると、ソーラーパネルが使用できない理由は気温が-183度まで下がるなど故障の原因となる環境もあるとしており人が生きる上で太陽光に頼らない電力供給が求められます。

Rolls-Royce to build nuclear reactor for future Moon base by 2029
https://newatlas.com/space/rolls-royce-to-build-nuclear-reactor-future-moonbase/

イギリス宇宙庁はモジュラー原子炉を2029年までい開発するとして249,000ポンド(303,000米ドル)相当の契約をロールス・ロイスと交わしました。ロールス・ロイスが中心となりオックスフォード大学、バンゴー大学、ブライトン大学、シェフィールド大学の高度製造研究センター (AMRC) および原子力 AMRC の支援を受けて開発するというもので、実際に原子炉を開発するだけでなく原子炉によって生成された熱を伝達しそれを有用な電力に変換する一連の技術も含まれます。つまり実用可能な原子力となります。

有人探査は原子炉が支える

地球とは異なり厳しい条約が存在しません。その前に何もしなくても強い放射線に晒される宇宙ではむしろ短期間にミッションを終了させるため原子炉は今後多用されることになります。既にNASAもそれ自体が人体には安全レベルの小型原子炉(原子力電池)の開発を始めています。



NASAによると月面で生命維持装置や探査車の充電、ヒーターなどの電力も必要であり最低でも10キロワットの出力が求められるとしています。これは一般家庭の電力を十分賄える量でありそれほど大出力ではありません。しかし、将来的には最低限でも40キロワットの電力(一般家庭30世帯分)を出力できる装置を求めています。

このような原子力は非常に長寿命であり仮に廃棄するとしても月面から宇宙空間に放出することも容易です。いずれにしても長期ミッションになる有人火星探査など原子炉を用いることで容積を小型化し他の必要な装備を積むという工夫がされてくものと考えられます。