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生きているうちに一度くらいは大小様々な手術を受けることになると思うのですが、全身麻酔を受けるような比較的大きい手術に関して、術中に患者をなだめるような言葉やリラックスできるような音楽を聴かせると術後の痛みが軽減するという研究内容が報告されています。

この研究はドイツの5つの病院で行われた手術で研究が行われたもので、被験者となったのは385人、18~70歳の人物で全身麻酔を受け1~3時間の予定で行われた手術になります。

Effect of therapeutic suggestions during general anaesthesia on postoperative pain and opioid use: multicentre randomised controlled trial | The BMJ

私達の人体では全身麻酔状態では無感覚の状態と考えられているものの全身麻酔下で「つながりのある意識」(外部環境を知覚する能力)が保たれた状態になっているという証拠がいくつかあるとのこと。これが本当だとすれば手術中にこの意識を利用することで術後の鎮痛薬の量に変化があるのではないかと推定しました。

今回の研究では191人と194人の2つのグループにわけ、手術の種類や時間、手術中の薬物の使用などを可能な限り合わせ、片方のグループにのみ全身麻酔中にイヤホンを介して言葉や音楽を聴かせるなど対応を行ったとのこと。

結果、手術後の最初の24時間の間、痛み具合は音楽などを聞かせたグループでは有意に低く平均25%ほど減少していたことが確認できたとしています。手術後にオピオイドという鎮痛薬を必要とする患者の数にも変化があったといい、音楽などを聞かせたグループは121/191(63%)の患者で、何もしなかったグループでは155/194(80%)となり16%ほど少なかったとしています。

この結果を受けて全身麻酔中にイヤホンを介して行われる治療提案について「術後の痛みと痛み止め使用を減らすための安全かつ実行可能な安価かつ非薬物技術により実施でき、今後一般的な運用の可能性がある」ことを示唆しています。

研究者は特により侵襲的で痛みを伴う外科手術においてこの技術のさらなる評価を求めており、外科医と麻酔医は「手術中の様々な音や医師らの会話にも注意する必要がある」と示唆しています。