高齢者が認知症になる原因として最も多いアルツハイマー病について、人間の死体から抽出された成長ホルモン製剤から感染した可能性があるという論文が科学誌「ネイチャー」に掲載されています。
一部のアルツハイマー病患者は1985年まで使用されてきた異常プリオンを含む成長ホルモン剤の投与によって感染していた可能性があることが9日、 University College LondonのJohn Collingeを中心とした研究チームが雑誌「Nature」を通じて発表した論文により明らかとなった。イギリスの大学ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者によるとヤコブ病(クロイツフェルト・ヤコブ病)で死亡した35~51歳の8名を病理組織検査を行なった結果、6名(引用先では4名となっている)の脳からアルツハイマー病を引き起こす異常なたんぱく質『アミロイドベータ』の蓄積が確認されたことと、アルツハイマー病特有の脳内の血管損傷が確認できたとしています。
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この8名に共通していることとしては、死人の脳下垂体から抽出した成長ホルモン製剤の投与を受けていたことです。この成長ホルモン製剤は過去に低身長などの子供に投与されていたもので、死体に含まれていた異常プリオンタンパクが成長ホルモン製剤に混入し、結果的に患者の体内に入りヤコク病を発症させたことがわかり現在は使用が中止されています。
つまり今回の研究では成長ホルモン製剤からプリオンだけではなくアミロイドベータも感染させた可能性があるということです。
ヤコク病については100万人に1人程度の割合(ただし、症状についてはアルツハイマー病に似ていることからその実数は不明とされています)で発症する病気でアルツハイマーと同じように認知症も引き起こし現在も治療法はありません。これまで報告されたヤコク発症の原因は遺伝子異常で体内に蓄積されるという以外に異常プリオンを含む食肉を食べたこと、そして医療行為により他人から感染する例があります。
具体的にはヤコブ病患者に使用した深部脳波電極針を使い回ししたことで感染した例、死体から角膜を移植し感染した例、そして上記でも紹介したように死体の脳下垂体から抽出した成長ホルモンの投与を受けてヤコブ病を発症したというものです。
ヤコク病患者については感染のリスクを回避するため献血はできず、医療機関を受診する際はこの病気と診断されていることを伝える必要があります。
研究者によるとこの8名はヤコク病に死亡しておりアルツハイマー病を発症したかどうかは分からないとしているものの接種後30~40年という潜伏期間を経てアルツハイマー病を発病するに至った可能性はあると話しています。また今回の研究はアルツハイマー病はヤコク病と同じように人から人に感染すると結論づけらたものではないとしています。