ICBM

米カリフォルニア州サンディエゴで先日、航空に関する会議の中である提案がありました。それはロシアとアメリカで廃棄される弾道ミサイルについてです。

提案内容とは弾道ミサイルを被災地支援物資運搬用に改造するというものです。これにより弾頭部分に緊急物資を詰め、極めて短い時間で被災地に届けることができ、結果的に飛行場や船舶が到着するまでに大勢の命が救われるのではないかというものです。

実際のところ、ISCコスモトラス(ロシア・ウクライナ・カザフスタン)ではロシア軍で退役した大陸間弾道ミサイルを使用した人工衛星の打ち上げも行っており、弾道ミサイルを改造し別のものを運搬することは可能です。ただ、人工衛星や核弾頭と異なるのは、被災地に安全に支援物資を送り届けなければなならないという点です。


▲ドニエプル 大陸間弾道ミサイルを人工衛星打ち上げに改造した商用ロケット。投射重量は7.2~8.8トン。

これについて社会戦略研究所のウラジーミル・エフセエフ所長によると、「弾頭部分に支援物資を搭載して届けるならば、パラシュートを取り付ける必要がある。これにより設計が大きく変わるだろう。また、大陸間弾道ミサイルの弾頭部分が、マッハ5の速度で上層大気に入ることも忘れてはならない。大規模なパラシュートシステムが必要になる。だが速度は非常に速いため、減速に成功するかは分からない。」と話しています。 

その他の不安材料としては支援物資を積んだミサイルが非友好国の方角に飛んだ場合、反撃される可能生があるという点です。ロシア宇宙飛行学アカデミーの準会員ユーリー・カラシ氏は地球上で不信が解消されるまでは、弾道ミサイルによる「緊急支援」が実現されることはないとしているものの、この提案自体について専門家らは「プレス機にかけて押しつぶす」よりは有益だと述べているそうです。

弾道ミサイルの性能は様々なのですが、一般的に発射から10,000km離れたところまでの飛翔にかかる時間は約40分ほど。ただし、緊急を有する災害の発生頻度、1度に輸送出来る量、そして1基あたりの維持費を含めたコストを考えると弾道ミサイルを使う必要性を問われるかもしれません。

参考:The Voice of Russia