子孫を残すため花を咲かせ、自身の育てるため光合成を行っている植物。しかし、今回新たに発見されたのは、この両方を行わないという非常に珍しい植物「タケシマヤツシロラン」です。
京都大大学院人間・環境学研究科の末次健司研究員(植物分類学)は7日、鹿児島県三島村の離島・竹島(屋久島の北約40キロ)で新種のラン科植物を発見したと発表した。「タケシマヤツシロラン」と命名され、近く、フィンランドの植物学会誌に掲載される(電子版は掲載済み)。国内で未知の植物が見つかるのは極めてまれ。また、このランは光合成をせず、花も咲かせない。末次研究員によると、こうした特徴を持つ植物は世界で2例目という。
末次研究員によると、光合成をせずに他の植物や菌類から養分を奪う「従属栄養植物」を調査中の昨年4月、竹やぶの中で100本以上が自生しているのを見つけた。既に知られている「ハルザキヤツシロラン」に近い種類だが、花の内部構造に違いがあり、新種と判明した。
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世界的にも珍しい新種の植物が発見されたのは鹿児島県の竹島です。『タケシマヤツシロラン』と名付けられた新種の植物は花は開かずに、つぼみの中で自家受粉し、数万個の種子を数十メートルの範囲に飛ばすという閉鎖花の植物です。また、この植物は光合成をしておらず他の植物や菌類から糖を含むすべての養分を略奪する特異な進化を遂げた「従属栄養植物」に分類されるそうです。
photo:Annales Botanici Fennici, 50
photo:末次健司研究員
実はこの両方の特徴を合わせ持つユーニクな植物は、台湾で同じ種のヤツシロランの一種が確認されたのみ。これらの植物は光合成を行う必要がないため、花期と果実期しか地上に姿を現さないことと、花期は非常に短く地上に現われても小さく目立たないものが多いため発見が困難だといいます。その上で、日本において全く未知の植物が、未知の自生地とともに見つかるということは非常に珍しいと話しています。
末次研究員は「植物の主要な特徴を失っており、いわば『植物であることをやめた植物』。 不思議な生態に至った経緯を解明したい」と述べています。
参考:京都大学