ベニヒメトンボ

細菌の細胞を切り裂くという物理的方法で極めて強力な殺菌効果が確認されたのは、トンボやセミの羽根です。また、この抗菌性を持つ人工的な製品は容易に製造できるとしています。 

【11月27日 AFP】細菌が存在しない病室、ドアノブ、台所の調理台などを想像してほしい──しかも細菌を殺すのに熱湯やマイクロ波の放射、殺菌剤の1滴も必要ないとしたら――。オーストラリアの科学者らによる驚くべき発見をもたらした背景には、このような発想があった。



 研究チームは2012年、人間にも感染し、抗生物質への耐性を持つようになる「日和見菌」の1種の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対して、セミの羽が強力な殺菌作用を及ぼすことを発見して驚嘆した。詳細な調査の結果、答えは羽の生化学的な性質ではなく、羽の表面に等間隔に並ぶ「ナノピラー(極微細突起)」にあることが分かった。細菌は、この表面に付着すると粉々に切り裂かれてしまう。

AFPBB News
今回研究の対象となったのはベニヒメトンボというオーストラリアに生息するトンボの羽根です。実はこの羽根を電子顕微鏡で拡大すると、高さ240ナノメートルの突起構造が剣山のように等間隔で並んでいることを発見しました。

この剣山のような構造は「ナノピラー(極微細突起)」と呼ばれており、太陽電池パネル用の半導体を構成するブラックシリコンで同じような突起物から強力な殺菌効果が確認されていました。

ナノピラー
Photp:ブラックシリコンとベニヒメトンボの表面(参考

実験ではこのベニヒメトンボとブラックシリコンを用いて殺菌効果を確認しました。細菌は緑膿菌、黄色ブドウ球菌、そして炭疽菌の仲間である枯草菌の3種です。
細菌を付着させてから3時間経過後の表面1平方センチ当たりの細菌の殺傷率は、1分当たり45万個前後でした。これは、黄色ブドウ球菌を人間に感染させるのに必要な最小量の810倍で、緑膿菌では7万7400倍に相当する率になりました。

極めて強力な殺菌効果がある虫の羽根はトンボ以外でも“撥水性”を有していれば同様の物理的殺菌が行えるとしています。

現在、ナノピラーの構造を持つ製品はブラックシリコンがあるのですが、製造コストの面がネックになっています。しかし、研究チームはナノスケールの細菌殺傷能力を持つ表面を作るための選択肢は他にも多数あるとし、「合成ナノ物質は、幅広い分野で容易に製造できる」としています。

Top Photo:PAPAYA
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