フィストバンプ

お互いに拳と拳をポンとぶつけあうハイタッチ感覚の“フィストバンプ”というのがありますよね。実は握手ではなくフィストバンプで挨拶することにより、手を経由して感染する病気を予防することができると研究結果が発表されました。

 ウェストバージニア州モーガンタウンの形成外科医で手外科医のW・トーマス・マクレラン(W. Thomas McClellan)氏はあるとき、同僚2人とメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)について話していた。MRSAは抗生物質に耐性をもち、治療の困難な感染症を引き起こす病原菌で、よく院内感染の原因となる。 

「MRSAに感染している患者の部屋に入るときは、ガウンを着け、手を洗う」とマクレラン氏は述べる。「しかし、そこにはガウンなど着けていない患者の家族がいて、おそらくは(手に)MRSAが付着している彼らと握手することになる」。そこでマクレラン氏は、自分の幼い子どもたちと交わす挨拶から、あることを思いついた。「そうだ、フィストバンプをするのはどうだろう、と」。ナショナル ジオグラフィックでは、フィストバンプの利点について本人に話を聞いた。 

NATIONAL GEOGRAPHIC
この研究を始めた理由は『メチシリン耐性黄色ブドウ球菌』という多くの抗生物質が効かない多剤耐性菌に感染した患者の家族と接触する際、握手をしなければならないという理由からです。

フィストバンプが優れている点は、菌が付着しているであろう手のひらを触らないですむということ。実に細菌の伝播率を握手の約4分の1に低減させることができるとのことなのですが、全員が今からところ構わずフィストバンプで挨拶をして回るべきだということではなく、時と場合を選択し常識的な挨拶を行うべきだと主張しています。

研究者によると、会合という場では通常通り握手をしており、“フィストバンプが有効だと知っている”自身が勤める病院では毎日やっていると話しています。また病院内でもフィストバンプが流行っており、今回の研究を発表して以来、院内感染の発生件数が減ったといいます。もちろん、フィストバンプがその原因とは断言できないものの、単純に感染の意識を高める効果に役立ったのではないかと話しています。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は黄色ブドウ球菌が耐性化した病原菌であり、黄色ブドウ球菌と同様に常在菌のひとつと考えられ、健康な人の鼻腔、咽頭、皮膚などから検出されることがある。そもそも薬剤耐性菌であるため薬剤の使用が多い病院で見られることが多く、入院中の患者に発症する院内感染の起炎菌としてとらえられている。

 院内で感染者が判明した場合、感染者の治療も重要であるが感染を広げないことも重要であり、標準予防策に基づく適切な感染管理が必要となる。MRSAの場合、接触感染予防策が適用である。(Wikipedia)