転倒老人

中国では『転倒した人を助けない』というある種の文化ができてしまっているのはご存知でしょうか。これは数年前に助けてしまった故に不幸になった人が原因なのですが、この認識は今でも続いているのか。中国の記者が各地で実験しました。

旧正月前日に放送される中国版紅白「春節聯歓晩会」。今年話題となったコントが「助けますか?」だ。道で倒れている老婦人を男性が助けようとしたところ、老婦人は男性がぶつかったので転んだと言いつのるという筋書きだ。

実はこの設定、現実の事件をモデルとしている。2006年、バス停で転倒し老婦人が骨折。助け起こした彭宇(パン・ユー)さんに突き飛ばされたと告訴する事件があった。その後も同様の事件が相次ぎ、今では「転んでいる人を助け起こすのは危険だ」との認識が広がっている。

果たして中国人は善意を失ってしまったのか。2月28日付深セン晩報はそれを確かめるテストを行ったことを明らかにした。深セン市内8カ所で記者がわざと転倒し、どのぐらいの時間で誰が助けてくれたかを試してみようというものだ。

Record China
「転んだ人を助けない」というのは正しくは「転んだ人を助けてはいけない」というものなのですが、引用先にも書かれているように元となったのは彭宇(ポン・ユー)事件です。これは転んだ老人を助けたところ「お前が倒した」と難癖を付けられ裁判になったものの、その裁判でも「老人を助ける前に犯人を捕まえるのが筋だ」などと意味不明な判断をされ犯人扱いに。結果賠償金7万9000元(約105万円)を言い渡されたものです。

これ以来、全国で同様の助けと賠償が発生し中国では「転んだ人を助けてはいけない」という認識ができてしまったのですが、現在もその流れが続いているのかテストしたものが今回の記事になります。

テストを行ったのは中国の深セン市内8カ所。若い記者がわざと転倒しどのくらいで助けてくれるのか時間を測定しました。結果はほぼ全ての場合すぐに助けにきたものの、蘭海路では40人近くが見て見ぬ振りをし、最初の助けがくるまで7分かかったとのことです。

結果を見る限りだと助けないという認識は薄くなってきたのかと思うのですが、今回助けなかった人で警察に通報したという人は「(無実と証明できる)監視カメラがあれば助けました」と話しており、やはり訴えられることを恐れている人がいることは事実のようです。