アトラスとRD-180

アメリカが軍事衛星の打ち上げに使用してきたアトラスシリーズのエンジンについて、ロシア側が供給を中止したことで今後軍事衛星の打ち上げが困難になると予想されています。

  米政府は、軍事衛星を打ち上げる際にロシア製ロケットエンジに代わる手段を見つけることができなかった。ロイター通信が、米国防総省兵器購入プログラムの責任者フランク·ケンドール氏の発言を引用して伝えた。

   フランク·ケンドール氏によると、米国側は、ロシア製エンジンに代わる手段を模索し続けているという。同氏は、私たちはロシア製エンジンの使用を止めたいが、どのように実行したらよいか分らないと語った。

The Voice of Russia
今回の問題はクリミア半島を編入したロシアに対しアメリカ側が行った制裁処置の一部に、宇宙に関することとして国際宇宙ステーションに関すること以外は両国の交流を停止するというものがあります。処置に対抗するためロシア側はRD-180およびNK-33というロシアで製造されているロケットエンジンの供給を非軍事利用以外は中止すると発表しました。

RD-180
▲燃焼試験中のRD-180

RD-180はアメリカではアトラスロケットのメインエンジンで、アトラスロケットは米国の機密に関わる軍事衛星の打ち上げを行っているロケットです。現在アメリカにはRD-180が16基存在するとされ、直ちに打ち上げできなくなるということはないものの、今後のロシア側の制裁が続けば軍事衛星の打ち上げはデルタシリーズに頼るか、RD-180とほぼ同じ出力を持つエンジンの開発を行う必要があります。

仮にRD-180に変わるエンジンを開発するとしても今後数年の歳月を要し、多額の研究費用をかけるということになります。この余波は削られることが多い宇宙開発の予算にも関連してくることなので、アメリカが行うとしている宇宙開発全体に影響してくることが予想されます。

もちろん、デルタロケットでも軍事衛星は打ち上げられており全ての打ち上げができなくなることはないものの、今後の打ち上げには大半な遅れや中止が生じることが予想されます。


RD-180はRD-170の派生型のロケットエンジンです。ロシアのNPOエネゴマシュが製造し、アメリカのプラット&ホイットニーとロシアの合弁企業『RD AMROSS』が輸入・販売しています。RD-180の推力重量比は78.44、一方デルタVのメインエンジンRS-68は51.2となっています。

NK-33
▲NK-33

また合わせて輸出制限がかけられたNK-33は推力重量比137.0と極めて優れた性能を持っており、これまで開発されたケロシンと液体酸素のロケットエンジンでは最も高性能なエンジンとなっています。