グリーゼ851g

2010年9月末、カーネギー研究所の天文学者ポール・バトラー氏及びカリフォルニア大学サンタクルーズ校のスティーブン・フォクトグリーゼ氏により生命が存在する可能性の高いグリーゼ581gという惑星が見つかったと発表がありました。しかし、その後行なわれた探査でグリーゼ581を公転するいくつかの惑星が存在しないことが明らかになりました。 

「生命が存在できる初の惑星が見つかった」などと当時話題になったのはグリーゼ581という太陽と同じ恒星を中心に公転する天体です。当時この星系には6つの惑星が公転していると発表されており、内側から6番目の惑星グリーゼ581gは「質量も(主星からの)距離も、表面に水が存在するために最適だ」などと発表されていました。参考

しかし、今週発表されたペンシルバニア州立大学のポール・ロバートソン氏の論文によると、グリーゼ581gという惑星は存在しないことが明らかになったとしています。

存在しなかった天体について、なぜ「存在する」と発表されてしまったのでしょうか。 これら惑星はドップラー法と呼ばれる一般的な方法で観測されました。しかし、変化が非常に小さく当初から「観測の誤りではないか」と他の専門家からも指摘されていたといいます。
ドップラー法
観測者から見て主星つまり恒星が前後に揺れ動くことで、この間の光の波長が微妙に変化することで惑星を見つけ出す方法。太陽系の太陽も主に木星の重力により毎秒約13m揺れ動いており、現在の観測技術によるとこの揺れによる光の変化は毎秒1m程度の精度で測定することができるとしています。参考

ロバートソン氏も当時、この天体について別の解析を行い存在を確認したところ無かったことが分かっていたといいます。同氏はドップラー法で誤って観測されてしまった原因についてグリーゼ581a、つまり主星の黒点が恒星の自転で見え隠れし、これが惑星の重力が引き起こす揺らぎによく似ているためだとしています。

同論文の共同研究者ペンシルバニア州立大学のスブラス・マハデバン氏によると、星系グリーゼ581で見つかったb,c,eについても「すべて幻だったというのが結論だ」と話しています。ちなみに、グリーゼ581に存在する残りのd,fについてもその存在の可能性は低いとみられています。

グリーゼ581gなどを2010年に発表したバトラー氏、フォクト氏は今回の論文についてコメントは出していないとのことです。

参考:NATIONAL GEOGRAPHIC