アポロ計画

人類は再び月を目指そうとしていますが1960年代、アポロ計画が行われるほぼ同じ時期に米軍が月に月面基地を建設し核実験や核兵器を配備するというホライズン計画を提案していたことが明らかになりました。

CNNが報じた内容によると、1960年代アメリカ陸軍が『ホライズン計画』というものを提案し、「月面の有人軍事基地は必須である」と冒頭に「月面基地の開設でソ連に先を越されれば、我が国の体面が傷付き、ひいては民主主義の理念にも傷が付く」「最優先で開発を行うべきだ」とするジョージワシントン大学が入手した機密文書が公開されました。

CNN.co.jp : 月に米軍基地の極秘計画、核実験の構想も 1960年代の文書公開

この文書は機密が解除されたものなのですが、ホライズン計画では1964年に月面基地の着工を開始し1969年に完成を目指すとし、合せて必要な宇宙船や月ブルドーザー、モジュール式キャビン、宇宙服の設計図や、コロニー建設の候補地を記した月の写真も添付されていたといいます。

機密文書によると、「最大の目的は米国の力を世界に見せつけることにある」と記されていたものの、1967年に宇宙空間のいかなる場所で核兵器を含む軍事兵器の設置を禁止する宇宙条約が発行され、結果的にホライズン計画は廃案となりました。

アポロ17号
▲アポロ17号の月面着陸(1972年12月)

月で核兵器を爆発させるという計画はホライズン計画以外でも月面調査飛行(A-119)というプロジェクトでも提案されており、2012年11月にこのプロジェクトを主導していたレナード・ライフェル氏(当時85歳)にCNNが取材を行っています

ライフェル氏によると人類初の衛星打ち上げ、及び有人宇宙飛行に成功させたソ連に米国は相当な劣等感があったようで、特に軍事的な抑止力の点について国民を安心させる必要があったと話しています。計画では広島型原爆規模の核兵器を月面に衝突させ起爆させるというものでした。

ただ、この案は1959年前後に構想そのものに対し懸念する声が高まり計画は中止しました。ライフェル氏によると、月面基地を建設する計画つまりホライズン計画があったことも2年前に当時話しており、基地を作る理由としていはソ連によるアメリカの先制核攻撃がおこなわれ反撃する能力が失われた場合に、月面基地から核兵器を発射するというものだったとしています。


ライフェル氏が述べているように非常に恐ろしい構想なのですが、月面に基地を作り核兵器を発射するというのは理解し難い内容です。そもそも1960年台には既に弾道ミサイル潜水艦が40隻建造され潜水艦発射弾道ミサイル「ポラリス」の開発に成功し実戦配備されていました。このような潜水艦があるにもかかわらず月面に反撃のための核ミサイルを配備させようと計画が進んでいたのか。

廃案となった理由は月に基地を作り核軍拡競争をさらにエスカレートさせるという懸念の他にも、アポロ計画で“米国の力を世界に見せつける”ことに成功したことや、反撃可能な核兵器搭載の潜水艦の登場が左右させたのかもしれません。