反日ドラマ

中国共産党紙が先日、中国国内で放送される日中戦争を描いた所謂『反日ドラマ』について異例の批判記事を掲載したなどと報じられていました。今回は批判の本当の意図について紹介していこうと思います。写真は反日ドラマ「箭在弦上」のワンシーン。

この記事は2014年8月14日付の中国青年報という記事に掲載されたものです。中国青年報とは中国共産主義青年団中央が発行する機関紙であり、政治・社会に関する記事を中心に大きな影響力を有する(参考)とされています。日本テレビによると中国共産党の若手エリートを養成する組織などとしています。

そんな中国青年報に掲載されたのは中国で今も多く制作、放送され続ける反日ドラマ(抗日ドラマ)です。時代は日中戦争(第二次世界大戦)とその前後が大半のようなのですが、反日ドラマに「歴史を忘れた娯楽に成り下がっていて、若い世代が本当にあの歴史を認識しているのか心配させる」「我々が日本側に歴史を忘れるなと批判するなら、自らの文化・歴史を遊び事にしてはならない」と論評したとしています。参考

この記事について『異例』という言葉を使い日本では報じられたそうなのですが、「自らの文化・歴史」云々という言葉は異例としても反日ドラマ批判は昨年も行なわれています。

2013年2月、中国国営新華社通信(新華網)は公式の中国版Twitterで「抗日を減らし日本への理解を深める」というタイトルで、「(抗日ドラマでは)お互いを理解し合うことなどできない。中国のテレビにはもっと日本に歩み寄ったものや、日本への理解を深められるものが必要だ。テレビは本当の日本を伝えるべきである」などと指摘しています。

しかし、それでも反日ドラマが作られて放送されているのは事実で、最近は本数が少なくなりブームが去ったなどとされていますが実際は違います。当局がドラマを検閲し規制しているためです。この検閲については反日ドラマ以外でも行なわれており、2013年2月には業界関係者の話としては「放送制限ばかりのドラマ界で、抗日戦争を撮らなければ何が自由に撮れる?」という状態だと話しています。
中国の著名な作家で、脚本家でもある六六氏は中国でも関心の高い官僚のスキャンダルや建物の手抜き工事や環境汚染などを脚本することができないとしており、これは全て中国のドラマに対する規制が原因だと指摘しています。

中国の反日ドラマ①

中国で放送されている反日ドラマ。日本人の想像する反日ドラマ像とは異なる印象を受ける。

中国で反日ドラマが多く放送されているのは需要があることが最大の原因なのですが、政府による規制も大きく関係しています。一方で特に最近まで放送されていた反日ドラマとは伝説のヒーローが現世に現れ日本軍の兵士や兵器を破壊し、数百人の日本兵が一瞬で爆死するという空想の内容が多くなっていました。これについて中国メディアは「あまりにも史実とかけ離れた荒唐無稽で低俗な内容に変化している」などと記事にしています。 

つまり、中国青年報が記事で言いたかったこととは『歴史とは異なる荒唐無稽の反日ドラマ』についてで、反日ドラマを止めさせという意味ではなく、もちろん「日中関係が良い方向に」「関係改善」などという意図が含まれているものでもありません。