宇宙飛行士

長期間宇宙に滞在する上で問題視されるのは避ける事ができない放射線です。これは宇宙線と呼ばれるものなのですが、ロシアが国際宇宙ステーションで行った実験によるとこれまで言われていたほど放射線は浴びないことがわかったとしています。

宇宙空間には太陽や超新星爆発から発生している重粒子線や中性子線、ガンマ線など様々な宇宙線が飛び交っています。これらの一部は地上に暮らす私達にも自然放射線として一定数浴びているのですが、国際宇宙ステーション軌道になると地上の100倍(1日当たり0.5~1mSv)被曝するといいます。

宇宙飛行士は放射線被害をそう受けない - News - サイエンス - The Voice of Russia

ロシア科学アカデミー 医学生物学問題研究所は今後の長期宇宙飛行計画に向け、人体はどれだけ宇宙線に晒されているのか実物大の人体模型を宇宙に運び測定を行いました。

マトリョーシカファントムの概要

「マトリョーシカR」と名づけらた今回の実験には、宇宙線が人体とほぼ同じ吸収率というポリウレタン製の頭部と胴体からなる模型で行われました。このポリウレタン製の内部には被曝量を測定する計器が埋め込まれています。
今回の実験について研究者ヴャチェスラフ・シェルシュコフ氏によると、人体でも特に被曝の影響が問題となる上半身の臓器を重点的に行ったとし、人体ではなく人形を使った理由については「人間に計器を埋め込むわけにはいかないからね」と話しているといいます。

線量計を組み込んだファントム

測定は船外活動と船内活動を想定して行われました。船外活動では実際の宇宙服を着用させ宇宙遊泳させ、船内活動では「きぼう」密閉コンテナF2ラックに収容され被曝量が測定されました。(測定期間は約10ヶ月)

結果、人体内部の被曝量として宇宙飛行士が胸ポケットに備え付けられている線量計と比較し、船外活動では15%、船内では2倍ほど低い被曝量だったとしています。

マトリョーシカ実験:「きぼう」での実験 - 宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター - JAXA

宇宙線と宇宙飛行士の被曝量

NASAは宇宙飛行士に宇宙空間で晒されてもよい合計被曝量として男性800mSv(0.8Sv)は女性600mSv(0.6Sv)という数値を設けています。言い換えればこの数値を越えた場合、宇宙飛行士として二度と採用されることがない基準になります。

この数値がどれだけのものなのかという例として、火星探査機キュリオシティーが地球から火星へ向かう際に行われた宇宙線の測定が行わました。結果、現在考えられている500日の有人火星ミッションでは1回のミッションでこれを超えてしまう1Sv(1000mSv)になることが分かりました。