W・M・ケック天文台

米国防総省、国防高等研究計画局(DARPA)は地上から数百km~数万kmにある人工衛星を地上から撮影可能な新技術について公募することを発表しているとのことです。

今回DARPAが新技術を公募しているのは映像分野です。DARPAによると必要とされているのは地上からはるか遠く、全長10m程度かそれ以下の人工衛星を光学や電波を用いて詳細に確認する技術です。

DARPA: 静止軌道衛星の詳細な映像を撮影することを可能にする新技術を公募 - Technobahn

100億年彼方の光を見ることができる光学分野を用いれば比較的容易ではないかと思ってしまいそうですが、実は現在の光学技術を用いても約36,000kmの距離にある静止軌道衛星の姿はぼんやりとしか見ることができず、何らかの問題が発生した場合その状態を地上から直接観測することは困難だといいます。

DARPAによると、仮に現在の光学技術で地上36,000kmの静止軌道衛星を詳細まで確認できるレベルにするには理論上直径200m程度の反射鏡が必要で技術的に製造することは困難としているそうです。その上で現在用いられている望遠鏡よりもおよそ100倍ほど精巧な映像を得るため、新技術を開発し公募することで将来の静止軌道衛星の観測体制の充実を図るとしています。

光学分野はよく分からないものの人工衛星から地上を撮影したものでは解像度数十cmというものがある一方、これを逆に地上から人口衛星に向けた場合ぼやけて映ってしまうのか。実際のところ地上を撮影した衛星写真は多くあるものの逆に衛星を写した「衛星写真」というのは国際宇宙ステーション以外ほとんど目にすることはありません。したがって民間に需要がなかったことに技術開発の遅れがでたものとも考えられます。

▼天体望遠鏡で撮影した国際宇宙ステーション
国際宇宙ステーション
 
こちらはアメリカ、マサチューセッツ州にある市民科学教育センター保有の直径63.5センチ反射望遠鏡(天体望遠鏡)を用いて撮影した国際宇宙ステーションです。このようにある程度の望遠鏡と追跡装置があれば63.5cmでもこの程度の解像度を得ることができるようです。

一方、米軍はこれに大気のゆらぎの補正を行える人工衛星観測用の専門天文観測施設「スターファイアー光学系施設(Starfire Optical Range)」というのを既に稼働させており、これでスペースシャトルが飛んでいた軌道を撮影した場合、スペースシャトルに貼られた1枚1枚の耐熱パネルの状態も確認できるほどの解像度を得ることができるとされているようです。