火星

今後の宇宙開発として地球の磁気圏から離れた月や火星での長期有人ミッションが挙げられます。しかし、このような環境下では地上や国際宇宙ステーションよりもはるかに強い放射線に晒され、人間の脳にも悪影響を与えると米大学が研究結果を報告しています。

宇宙征服の野望の前に、新たな困難が立ちふさがっている。カリフォルニア大学アーヴァイン校の腫瘍学者たちが行った、「Science Advances」で発表されたばかりの研究によると、長期間の宇宙ミッションの間に宇宙飛行士が受ける宇宙線の粒子は、中枢神経系に対して深刻で永続的な損傷を引き起こし、彼らの認知能力に悪影響をあたえる可能性があるという。

WIRED.jp

この研究はNASAと国立研究施設を用いて宇宙で空間で浴びるであろう放射線量をマウスに照射し、脳にどのような影響があるのか調べる実験です。結果、マウスの脳には炎症が確認でき、ニューロン間の信号伝達のメカニズムを損傷させていたことが分かりました。これによりマウスの脳は人間が放射線治療で過剰な量を受けた場合と同じような機能障害、記憶の維持や学習機能に影響を与えていたとのことです。

具体的な数値(放射線量や日数など)が書かれていないので判断は難しいのですが、何れにしても長期間宇宙を漂うことになる有人火星探査等では何らかの被曝を軽減する装置や防護壁が必要です。


宇宙空間では太陽や太陽系の外側からやってくる放射線が高く、これまで観測された最新のデータとしては火星探査機キュリオシティに搭載した放射線評価検出器により、地球~火星間の宇宙空間で1日当たりの放射線量は平均1.8mSv(1時間あたり75uSv/h)であることがわかりました。これは地上で暮らす私達の環境を0.02~0.05uSv/hとすると1000倍以上という数値になります。

この測定値から仮に防護処置を施さず有人火星ミッションを行なった場合として、宇宙飛行士1人あたりの行き帰り500日間で合計被曝線量は1Sv前後になると予想されています。これがどのくらいの数値なのかというと、NASAは宇宙飛行士の被曝量は男性は生涯で800mSv(0.8Sv)、女性は600mSv(0.6Sv)を超えてはならないと定めており、火星から帰還した宇宙飛行士は二度と宇宙飛行士には選ばれないどころか、宇宙にいくことすらも許されない量になります。(参考:火星表面の放射線量は『帰還困難区域』をはるかに超える)

もちろん、NASAとしてはそのような事がないよう何らかの処置を行い有人宇宙開発を行うとしているのですが日常とは異なる大量の被曝はこれまで言われていた脳の学習機能や認知機能に深刻な影響を与えるということは事実のようです。