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ロシアが運用している有人宇宙船「ソユーズ」。実は過去に機関砲を搭載した宇宙戦闘機としてのソユーズ宇宙船が開発されようとしていました。いったいどのような宇宙船なのか調べたものを紹介していこうと思います。(写真は現在のソユーズ宇宙船)

1962年、ソ連の宇宙開発の中心となったセルゲイ・コロリョフにより提唱されたのは宇宙空間を周回する敵の衛星(アメリカの衛星)を迎撃する有人宇宙戦闘機ソユーズです。このソユーズに関しては有人宇宙船『ソユーズ1号』が初めて宇宙に行った1967年よりも5年前に提唱されたものになります。

コロリョフにより提唱された宇宙戦闘機ソユーズは『ソユーズ7K-P』(ソユーズP)と呼ばれるものです。ソユーズ7K-Pは敵国の衛星に近づき搭載した機関砲で破壊するものだったのですが、機体は製造されることなく改修型として『ソユーズ7K-PPK』(ソユーズPPK)が計画されました。
ソユーズ7K-PPKには現在の円形型の軌道モジュールがついている位置に8つの小型ミサイルを搭載。至近距離まで近づき敵の人工衛星を破壊するというものでした。しかし、この計画も1965年にキャンセルされています。

▼ソユーズ7K-PPK
ソユーズ7K-PPK

その後さらに発展型として登場したのは『ソユーズ7K-VIズヴェズダ』(ソユーズ6)です。こちらは同じくソユーズ宇宙船を元に開発されたものなのですがソユーズ宇宙船とその後部にあるモジュールを行き来できるようになっており『小型宇宙ステーション』となっていました。こちらの機体は戦闘機という利用方法外も敵国の偵察まで運用方法が拡大されています。
ソユーズ7K-VIズヴェズダには電源として崩壊熱による発電を行うプルトニウム電池を搭載。敵衛星破壊用に機関砲『NR-23』で武装されており、船体を動かすことで照準するという方法をとっていたとされています。
ソユーズ7K-VIズヴェズダは実際に製造されており1966年までに6人の宇宙飛行士が選ばれ訓練を受けていたものの1967年にキャンセルされました。

ソユーズ7K-VIズヴェズダに搭載を予定していた機関砲はどのようなものかについて調べたところ『recoilless rifle』つまり無反動砲だと書かれていました。これはНудельман, Александр Эммануиловичという人物が設計したものが搭載されていたと書かれています。

▼NR-23
NR-23

▼ソユーズ7K-VIズヴェズダ
ソユーズ7K-VIズヴェズダ

ソユーズ7K-VIズヴェズダ_1

パッと見た感じでは宇宙戦闘機や機関砲は宇宙に運ばれることはなく運用もされなかったと思ってしまいますがこの技術は宇宙で使用されています。

世界初の有人宇宙ステーションとなったアメリカの有人軌道実験室(Manned Orbital Laboratory, MOL)に対抗するため、ソビエトは初の宇宙ステーション『サリュート』を1971年4月に打ち上げています。合計7機が打ち上げられたもののその内2・3・5号は軍事用の宇宙ステーションでそれぞれを『アルマース1、2、3号』と呼んでいました。このアルマースには『R-30』という23mm機関砲が搭載されており、宇宙飛行士によるマニュアル操作もしくは地上からのリモート射撃が行え1発200gの砲弾を秒速690m/sの速度で打ち出すよう設計されていました。
しかし、実際のところアルマースは現在の宇宙ステーションでありソユーズ宇宙船とドッキングし乗り移る必要がありました。機関砲はあくまでも自衛用に搭載されていたと言われています。

▼ソ連の軍事宇宙ステーション、アルマース
アルマース

▼サリュート(中央)
サリュート

この機関砲についてはサリュート3号(アルマース2号)にのみ搭載されていたといわれています。サリュート3号は1974年7月にソユーズ14号がドッキングし2週間かけ有人による偵察が行われました。その後、無人のサリュート3号を使用し地上からリモート操作による射撃試験が行われたとされています。

宇宙戦闘機ソユーズが提唱された1962年といえば核戦争一歩手前までいったキューバ危機があった年で宇宙空間でも軍事的な乗り物が必要とされていたというのは時代を反映していたとしか言いようがありません。

ちなみに現在使用されているソユーズ宇宙船は『ソユーズTMA-M』というタイプです。これはソユーズTというソユーズ宇宙船の発展型なのですが、ソユーズTは宇宙戦闘機ソユーズシリーズとアポロ・ソユーズテスト計画に使用されたソユーズ7K-TMが元になっています。