アメリカ航空宇宙局(NASA)が計画しているものとして、従来のように液体酸素や水素を使うのではなくレーザーを用いて船体を加速させるという案があるそうです。
NASAの科学者フィリップ・ルービンは、「NASA 360」向けの動画のなかで、ひとつの可能性を述べている。「光子推進(レーザー推進)」を利用したシステムなら、わずか3日で火星まで到達できるというのだ。このシステムは、簡単に言うと、大出力レーザーを宇宙船に照射することで超高速を実現させるというものだ。現在ロケット本体や惑星探査に向かう探査機等の多くは酸化剤と燃料を燃焼させ加速させています。これは探査機に搭載しているスラスターという小型のエンジンも同じなのですが、NASAでは宇宙空間で利用可能な新たな推進装置としてレーザー推進の研究を進めているそうです。
WIRED.jp
その性能は化学ロケットとは比べ物にならず質量100kg程度であればレーザー推進を使用しわずか3日で火星に到達することができるとしており、従来のように地球と火星間を150日あまりかかっていたことに比べ大幅に短縮できるとしています。
記事によると、レーザー推進に必要なのはレーザーを外部から照射する装置とレーザーの粒子(光の粒子)を受け止める帆です。レーザーを照射する装置については地上に設置可能でNASAによると加速させるには十分なエネルギーを届けることができるとしています。帆についてはどのようなものになるのかは分からないのですが、それなりの大きさで薄く軽い丈夫な素材で造る必要があると考えられます。
非常に興味深い内容なのですが、疑問なのはどのようにして減速させるのかです。確かに火星までは3日で到達可能としているものの超高速で動く物体を火星軌道に投入することはできず、何らかの方法で減速させなくてはなりません。そのため火星軌道上に原子力等を用いた装置を送り込み逆方向からレーザー照射する必要があると考えられます。
何れにしても人間が乗り込む宇宙船には使用できるものではないと考えられるのですが、地球と火星の公転の関係で探査機を送り込むには数年に1回しかチャンスがなくこれを無視できるようになるレーザー推進は科学者からすると魅力的なのかもしれません。
ロシアでもレーザー推進技術の開発が進められているのですが、こちらは帆を使うのではなくレーザーで物体を加熱させプラズマを生成しその噴出で加速させるというものとなっています。(参考)またNASAはEMドライブという火星まで70日の新たな推進装置の研究も進められています。(参考)