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ソーシャルゲーム事業者41社(他に準会員25社と賛助会員5社)からなる日本オンラインゲーム協会『JOGA』が今年4月1日から施行するという所謂『有料ガチャの自主規制』を発表したのですが、実際は複数の抜け道が用意されていることが明らかになりました。

一般社団法人日本オンラインゲーム協会「JOGA」はこれに加盟する事業者数十社の「オンラインゲーム安心安全宣言」として運営ガイドラインを発表しました。実はこれ自体は2012年9月1日施行されており、16年1月に改定したものが4月1日から施行という流れになっているのですが、具体的にどのようなものなのかその中身を紹介していきます。

ランダム型アイテム提供方式を利用したアイテム販売における表示および運営ガイドライン
http://www.japanonlinegame.org/pdf/JOGA20160401.pdf

わずか3ページしかない文章なのですが、まずJOGAでは課金システムである『有料ガチャ』をレア度に対して2つに分けているそうです。1つは『ガチャアイテム』というもので感覚では365日いつでも引ける通常ガチャという位置づけです。もう1つの『ガチャレアアイテム』は期間限定など逃せば二度と手に入らないアイテムや使用期限があったり、引ける数が制限されていたりと通常ガチャで出るアイテムより性能が高く希少性のあるガチャを指します。

上限5万円の中身について

さて今回のガチャ自主規制について大手メディアは『5万円を上限とする』などと表現しており、イメージとしては「今後ゲーム内では5万円以上の課金はできなくなる」と捉えてしまいますが、全くの誤りです。今回のガイドラインでは『有料ガチャの設定に関する事項』として確かにそのような表記があるものの、よく見ると複数ある事項の“いずれか”を厳守するだけでよいとしています。

以下はその内容。
a. いずれかのガチャレアアイテムを取得するまでの推定金額(その設定された提供割合から期待値として算定される金額をいう)の上限は、有料ガチャ1回あたりの課金額の 100 倍以内とし、当該上限を超える場合、ガチャページにその推定金額または倍率を表示する。

b. いずれかのガチャレアアイテムを取得するまでの推定金額の上限は 50,000 円以内とし、当該上限を超える場合、ガチャページにその推定金額を表示する。

c. ガチャレアアイテムの提供割合の上限と下限を表示する。
 
d. ガチャアイテムの種別毎に、その提供割合を表示する。

分かりやすく表現すると、aは『より希少性の高いアイテムを引けるガチャは取得できる推定金額について1回300円の有料ガチャであれば100倍以内(30,000円以内)にすること。ただし100倍を超えるガチャを設定する場合は推定金額と倍率を表示すればよい』というものです。 つまり推定金額と倍率を表示すれば上限はありません。
bは何かというと『有料ガチャの課金額と倍率は無関係に希少性の高いアイテムを引けるガチャの推定金額は5万円以内にする必要があるものの、これを超える場合はその推定額を表示するだけでよい』としておりここにも推定額を記載すればよいという抜け道が用意されています
cとdに至ってはアイテムを獲得できる「割合」つまり0.1%など確率を表示するだけでよいというだけの表現です。

一言で表現すると「ガチャの上限は各社が決めればよく、これまで通りレアアイテムを獲得できる確率だけ表示しておけば問題ない」という意味です。ちなみに、装備、武器、キャラクターなど複数の有料ガチャがあった場合それごとに100倍やら5万円という額が割り振られます。もちろんそのような表記をするゲームであればの話です。


上記はJOGAが例える『ガチャレアアイテム』のみについてで、通常のガチャについても一応規制があるもののこちらもいずれかを厳守すればよい非常に甘い規制になっています。
a. 有料ガチャ1回利用時に提供されるガチャアイテムの価値は、有料ガチャ1回の価額と同等またはそれ以上とする。
 
b. 有料ガチャ 10 回利用時に提供されるガチャアイテムの提供割合の期待値上の価値は、有料ガチャ 10 回の価額と同等またはそれ以上とする。
 
c. 有料ガチャの利用金額の総計が 5,000 円の場合、有料ガチャから提供されるガチャアイテムの提供割合の期待値上の価値は、5,000 円と同等またはそれ以上とする。
どのようなことが書かれているのかというと、有料ガチャで引けるアイテムは何も貰えないハズレを用意してはならず必ず課金額同等のアイテムを出さなければならないというものです。また10連ガチャなど連続して引けるガチャに関しても通常アイテムを出したり課金額を下回るようなハズレアイテムを提供してはならないと当たり前の内容です。
そして、先程も書いたようにこちらも「いずれか1つを守りましょう」という程度の内容です。


結局のところ「課金額上限5万円」というのは有料ガチャ上の1つの項目に過ぎず、これからも何万円、何十万円も課金できるような抜け道が複数用意されていることが分かります。
そして過去に何十万円も課金しないとアイテムをそろえられなかったり、特定の1枚のカード(キャラクターやアイテム)がでないと問題視されたサイゲームスやスクウェア・エニックスといった企業がJOGAに入会していない点を考えると今後も同様の問題は繰り返されることは確実です。

正直なところ誰のための「オンラインゲーム安心安全宣言」なのか考えてしまったのですが、利益至上主義を続ける業界のための「オンラインゲーム安心安全宣言」と見てよさそうです。