日本が人工衛星の打ち上げに使用している基幹ロケットH2シリーズに関して、これに置き換わる新型のH3ロケットが開発されているのですが、先日JAXA(宇宙航空研究開発機構)が現在の開発状況を公開しました。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2016年7月20日、メディア向けに新型基幹ロケット「H3」の開発状況を説明した。H3ロケットは基本設計を終えて詳細設計段階に入り、2016年度内にはエンジンなどの地上テストも開始される模様だ。H2ロケットとH3ロケットは何が違うのかという点に関して、まず大きなものとしてこれまで問題視されることが多かった打ち上げコストを大幅に下げることを『目標』としたロケットとなっています。具体的にJAXAによると太陽同期軌道という地上500kmの円軌道に4トンを投入可能なH3ロケットでは、現在のH2Aのおよそ半額の50億円(目標)になるとしています。
H3ロケットは現在の日本の大型ロケット「H-IIA」と「H-IIB」を置き換えるもので、2015年度からJAXAと三菱重工業が協力して本格的な開発を行ってきた。今回の説明会は2015年7月以来ほぼ1年ぶりとなる。
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またその他の違いとしてはロケットカラーはそれほど大きな変化はないもののロケットのサイズ、直径がいずれも大型化しており衛星フェアリングという人工衛星を収める『殻』により異なるものの全長は63m(53m)、コア直径は5.2m(4m)となりまました。(カッコ内はH2Aシリーズ)
現在H3ロケットはメインエンジンが3基もしくは2基と補助ロケット2基の基本タイプから打ち上げ能力を拡張したタイプが開発されるそうです。
こちらがH3シリーズになります。
分かりにくいのですがH3に続く数字・文字に関してはメインエンジンと補助ロケットの数、SとLはロケットにある衛星フェアリングの大きさを表しています。例えば一番左のH3-30Sではメインエンジンが“3基”、補助ロケットが“0基”、フェアリングがショートサイズ“S”から『30S』になります。
打ち上げコストはあくまで“目標”
今後H3ロケットが登場する度に打ち上げコストを抑えたロケットなどと50億円という価格が多用されると考えられるのですが、打ち上げ価格に関してはあくまで目標です。また50億円というのはH3シリーズで最も打ち上げ能力が低いH3-30Sものとなっています。他国のロケットと比較した場合
H3ロケットに関しては衛星打ち上げビジネスを考えたロケットとなっているのですが、打ち上げコストに関しては実は特別安いというものではありません。比較は難しいのですがアメリカのスペースXに関してはファルコン9ロケットを使用しGTO静止トランスファ軌道に8.3トンの打ち上げ能力があるものの価格はおよそ62億円です。またH3はファルコン9やアメリカのヴァルカン、ロシアのアンガラなど最新のロケットと対抗していかなくてはならず、共通して『ロケットの一部再利用』の設計になっています。これらの新世代ロケットはH3ロケットとは異なり従来の数十分の1という打ち上げコストも示されておりH3による衛星打ち上げビジネスは短命になる可能性も考えられます。