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ロシアの宇宙関連サイトによると、『アンガラA5V』というアンガラA5の性能向上型は開発は行わないと報じています。その背景にはロシアが今後実施する月面有人探査について性能が不足していることが大きな原因のようです。

ロシアの宇宙関連サイトКосмическая лентаによるとRKKエネルギアのウラジーミル・ソンツェフ氏がメディア取材に語った内容としてアンガラA5Vの開発を中止するという趣旨の発表を行ったと報じています。

Роскосмос отменил «Ангару-А5В»

ロシアのアンガラロケットはツィクロン、ロコット、ゼニット、プロトンなどの人工衛星打ち上げに使用しているロケット、ソユーズといったソユーズ宇宙船打ち上げロケットを一本化することを目的としたもので、将来は有人宇宙船『フィディラーツィヤ(連邦の意味)』の打ち上げにも対応したロケットとなっています。

アンガラロケットは打ち上げコストを抑えるためユニバーサル・ロケット・モジュール(URM)という共通モジュールが開発され、URMの本数を増減させることで柔軟な打ち上げ能力とコスト削減を狙ったロケットになっています。その中でアンガラ A5は、有人宇宙船打ち上げの『A5P』、そしてA5の性能向上型の『A5V』が構想されていたのですが、『A5V』についてはキャンセルになったという記事がこちらになります。

▼アンガラシリーズ(左からアンガラ1.2、A3、A5、A7)
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アンガラ A5はURMを中央に1本、補助に4本、合計5本使用した大型ロケットなのですが、A5Vでは打ち上げ能力向上を図るために5本のURMのエンジンをRD-191からRD-195に変更しています。さらに上段にURM-2をより重く高性能化したURM-2Vを搭載する計画でした。これにより低軌道への打ち上げ能力が24.5トンから34~38トンあまりに増加すると予想していました。

しかし予算の関係やURMの仕様変更による打ち上げコスト増加が見込まれること、さらにロスコスモスによると月探査に必要なロケットは地球低軌道に80トンの打ち上げ能力が必要だとしとしており、ロシアが予定している月面有人探査計画では『A5Vの最大38トン』は明らかに力不足であり開発を進める理由が無くなったと考えられます。

地球低軌道に80トンの打ち上げ能力

ロシアが構想する有人月面探査を行うため低軌道に80トンを打ち上げるロケットを開発する必要があります。しかし既にアンガラシリーズでは打ち上げは不可能であることが分かっているそうです。シリーズでは最も高性能なものでURMを7搭載したアンガラA7Vというものがあるのですが、これを使っても低軌道に40トン程度しか送り込めず80トンの打ち上げは不可能です。

▼エネルギア5K
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その上でКосмическая лентаによると、2013年にRKKエネルギアが予備研究として構想したロケットに『エネルギア5K(Энергия-5К)』があるとしており総重量は2,400トン、RD-171Mエンジンを搭載した補助ブースターを4つ、そして中央のコアロケットに同じくRD-171Mを搭載することで低軌道に79トンの打ち上げ能力があるとしています。

いずれにしてもロシアが目標にしていた月面有人探査が今後困難になることが予想され、探査計画の規模縮小や延期、無人探査機による月面探査に終わるというアポロ計画時代の旧ソ連ような悪夢が繰り返される可能性も見えてきました。