
今後実施される火星有人探査では水の確保が重要になってくると言われているのですが、その火星で地表表面付近に厚い氷の層が存在している可能性が高いとするテキサス大学を中心とする研究チームが発表しているとのことです。
さまざまな科学調査により、過去に水が存在した証拠がいくつも見つかっている「火星」。その火星にて地下に北米五大湖最大のスペリオル湖の水とほぼ同量の氷が存在していると、テキサス大学の研究にて報告されています。記事によると、NASAが運用している火星探査衛星「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」の地下構造を調査するレーダー「SHARAD」を用いたもので、テキサス大学のJack Holt氏によるとユートピア平原にある『scalloped depressions』という地形がカナダの北極圏にある『地下に氷を蓄えた地域』と酷似しており、以前から地下に氷があるのではないのかと言われていたといいます。
この火星地下の氷の層は、火星の北半球中緯度のユートピア平原に存在します。その面積はアメリカのニューメキシコ州よりも大きく、また地上からたった1~10メートル程度の深さにあるのです。
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▼ユートピア平原にあるscalloped depressionsという地形

そこで探査機を使用し調査が行われた結果、地表から1~10mの位置に厚さ80~170mの氷の層があることがわかったといいます。この氷の層は50~85%が水の氷としており、残りはチリや岩石が含まれた層となっているとしています。

現在の火星では少なくとも地球のような川や海は存在していないものの、古代火星には地球と同じように大量の液体を湛える海があったと言われています。NASAによると火星の斜面には液体の水(水の分子を含む過塩素酸塩や過塩素酸マグネシウム)が今も流れていることを昨年9月29日に発表しています。(参考)
いずれにしても今後実施すると言われる火星有人探査では現地で水を確保できるのかできないのかだけでも有人火星探査の難易度が変わってくることは確実であり、まずは本当に氷の層があるのか科学的な調査が実施されるものと考えられます。
また『scalloped depressions』という地形に関してはユートピア平原だけではなく、火星の一部地域では“非常に一般的な地形”とされており、他のエリアでも大量の氷の層があるものと考えられます。
▼観測エリア外で見つかっているscalloped depressions

