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人間が宇宙空間で活動するとなると必要になるのは宇宙服です。これは小さな宇宙船といわれるほど高性能な作業服なのですが、NASAが運用している宇宙服について故障が相次いでいると報じられています。

きたる有人火星探査時代に備え、NASAはすでに次世代の宇宙服の開発を進めています。しかし、新しい宇宙服は実用段階にはまだまだ数年の期間が必要とされます。一方で、現在使用しているNASAの宇宙服は在庫が残り少なくなっており、新型完成までもたない可能性が出てきました。

Engadget
1982年から現在も、アメリカ人宇宙飛行士やその他の宇宙飛行士向けに運用されているのは船外活動ユニット(Extravehicular Mobility Unit: EMU)というものです。これは私達が一般的に想像する真っ白の宇宙服がこれになるのですが、実は開発・製造された当初から現在まで使い古しを再利用し続けており、近年問題が幾つか生じているといいます。

記事によると船外活動ユニットは開発された当時に生産されたものを現在も使用しているらしく、15年の耐用年数を遥かに超えて使用している状態が続いているといいます。具体的な問題としては生産された18基の生命維持装置は内7つは既に使用不能になっている他、宇宙服自体も故障が報告されておりグローブの破れ、2013年には船外活動中に宇宙服から液体500mlが漏れ出し宇宙空間で溺れかけるという重大事故も発生していました。

参考:『宇宙で溺れかけた宇宙飛行士』、当時を語る : ZAPZAP!
▼宇宙で溺れかけた宇宙飛行士の映像


何故新規製造されていないのかは不明なのですが、船外活動ユニットは1着あたり10億円するとも言われており特に費用の面から更新が難しいと考えられます。
国際宇宙ステーションにはロシアが運用しているオーラン宇宙服があり「ロシアから借りればいいんじゃないか」という案もありそうなのですが宇宙飛行士の打ち上げもロシアに頼っている現在、さらに宇宙服もロシア製のものを借りるというのは考えられません。NASAに提出された監査本部の報告書によると新しい宇宙服の開発を急ぎつつEMUの修理にかかる費用と新規製造にかかる費用を比較するべきだとしています。


現在は使用されていないのですが人類を月面に送ったアポロ計画時使用していた宇宙服『A7Lは宇宙飛行士の体格に合わせて個別に製造されており本番用、トレーニング用、予備の3着が生産されていました。これ以外にもバックアップクルー用として本番用1着、トレーニング用1着が生産され1回の打ち上げあたり15着の宇宙服が生産されていたと言われています。もちろんこれらの宇宙服は全て使い捨てでEMUのように再利用はされていませんでした。