スカイロン_1

旅客機のように滑走路から飛び立ちそのまま宇宙に到達することができるという機体『スカイロン』。この機体に搭載するエンジン『セイバー』の燃焼施設が建設が始まりました。

イギリスのリアクション・エンジンズが開発しているのは滑走路から飛びたち極超音速で飛行しそのまま宇宙に飛び出し内部に搭載した燃料で加速し続けるという単段式スペースプレーン『スカイロン』です。

Hypersonic spaceplane engine set for Colorado tests | Daily Mail Online

このスカイロンに関して最重要となるエンジン『SABRE(セイバー)』について、高温気流試験施設をアメリカ コロラド州ワトキンスのフロント・レンジ空港付近に建設し、燃焼試験など実施するとしています。



そもそもスカイロンとはどのような機体なのか。この機体は無人で運用するもので、構造としては中央部分に人工衛星等を搭載できる貨物スペース、その両脇に液体酸素タンク、そして機内内部の大半を液体水素タンクが占めています。

▼③の赤い部分が液体水素の燃料タンク、④の青い部分が液体酸素の燃料タンク、中央の⑤が衛星を収めるスペースになります。
スカイロン


ユニークなのは翼の両端に搭載されたエンジンで大気圏内では空気を取り入れ機内の液体水素と燃焼させ、宇宙空間では機体内の液体水素と液体酸素を燃焼させることで、大気中・宇宙空間問わず加速させるというものです。この異なる2つの燃焼を単一のエンジンで行い、飛行速度は大気圏内でマッハ5以上、宇宙空間ではマッハ25以上の飛行速度を実現します。

▼セイバーエンジン(CG)
セイバー

機体は国際宇宙ステーションへ10トンの物資を送り届けることができ宇宙空間で人工衛星を放出した後は地球に帰還。液体水素と酸素を注入することで200回ほど再利用することが可能な設計にする予定です。

スカイロンが実際に宇宙に飛び立つことができるのか、その運命を左右させるのは間違いなくセイバーエンジンです。エンジンは取り込まれる摂氏1,000度の空気を1/100秒でマイナス150度まで瞬間冷却させ、更に氷で目詰まりさせてはいけないという非常に困難な設計となっています。

▼旅客機版スカイロン『リミテッド A2』


このエンジンの開発に向けリアクション・エンジンズは2017年9月にアメリカ国防総省先進研究プロジェクト(DARPA)契約し2018年にはマッハ5、摂氏980度という高温燃焼試験を実施する予定とのこと。また10年後までにスカイロンの試作機を開発しその旅客機版とされる『リミテッド A2』に関しては約20年先の開発を予定しています。