スペイン人により征服され滅亡したアステカ文明。スペイン人の襲来と共にわずか数年で数百万人から1,000万人が死亡するという恐ろしい出来事があったことが分かっています。その原因は何らかの感染症が疑われているのですが、ドイツ人研究者によるとサルモネラ菌が原因だった可能性がると指摘しています。
現在のメキシコ南部に、かつて栄えたアステカ文明。ヨーロッパ人がやって来て、この地域を支配した直後の1545~1550年、恐ろしい疫病が蔓延し、500万~1500万人のアステカの人々が命を落とした。疫病は地元の人々にココリツリと呼ばれていたが、その正体は500年間謎に包まれていた。アステカ文明といえばスペイン人の侵略が原因で滅亡したというのはご存じの方も多いと思いますが、その原因として極めて短時間に人口が1/10ほどになってしまったのは『ココリツリ』という謎の病にありました。
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このココリツリが一体何だったのかは現在も分かっていないもののドイツ、マックス・プランク研究所の研究者によると、メキシコにある当時の集団墓地から採取された人骨の歯から致死率の高いサルモネラ菌の一つパラチフスC菌が確認され、これが原因だったのではないかと論文を発表しています。
この菌に感染した場合、パラチフス感染症を発症し39~40℃の発熱が継続し嘔吐などの症状を見せます。また感染したヒトの便や尿、汚染された水やそれに触った手や食べ物を少量口にしただけで感染します。
集団墓地から発見された24人分の遺骨はいずれもスペイン人が侵略した後に亡くなったもので、うち10人からサルモネラ菌の痕跡が見つかったとしています。また侵略前の5人分のサンプルからは痕跡は見つからなかったとのことです。
このサルモネラ菌はどのようにして蔓延したのか。研究者によると菌はやはりスペイン人の侵略によりアステカ文明に持ち込まれたとしており、加えて植民地化の過程で当時の食糧供給路が混乱、飢餓が発生したことなど様々な影響により大規模な死者を出したのではないかと主張しています。